色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 この数日間、全てが夢であったらどんなに良かっただろうか。
 すべての悪の根源は、何だろう。
 ローズ様が海外からお妃さまを誘拐して結婚したせいではないか。

 …いや、違う。
 何に私は傷ついてるの?

 イライラして、「ああっ」と声をあげた。
 振り返って家の方を見たが誰も追いかけてこない。
 勢いで飛び出したものの、戻る気力は湧かない。
 一度、つまずいたら。
 どんどん、ごろごろと悪い方向に繋がっていく。

 戻りたくはなかったので。
 のろのろと歩き出した。

 自分の国じゃコンクリート固めの道なのに。
 この国は土の道のほうが多いのかも。
 がむしゃらに歩けば、やがて一帯は開けてカスミ様の畑が広がる。

 何も考えたくない。
 嘆きたくもない。
 悲しみたくもない。

 今、培ってきたものをすべて手放したとして。
 私には何が残るんだろう…
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