色褪せて、着色して。~沈丁花編~
セリくんを見ると、セリくんはじっと私を見る。
「あの・・・、俺のお母さん娼婦だったんです」
「……」
驚いて思わず座っていた体制を崩してしまう。
周りを見ると驚いているのは私だけだ。
「俺のお母さん、一生懸命働いて俺を育ててくれました。だから、娼婦である母を嫌いになることなんて出来ません。どうして、大人は娼婦っていう仕事を嫌うんですか?」
「……」
声が出なかった。
「そもそも、あんたは国王に命令されて娼婦を演じたわけだろ? なんで旦那さんと気まずくなる必要があるんだ?」
トペニがお腹をさすりながら私に質問する。
気づいたら、寸胴鍋の中身はあと1/3ほどしかない。
残りわずかだと気づいたセリくんが大急ぎで自分の皿にシチューをよそう。
すっかりと暗くなってきた室内に。
カイくんは、すっと立ち上がってランタンの準備を始める。
私は、トペニの質問にすぐ答えることが出来なかった。
「ま、あれか。太陽夫人はそもそも、自分の意志とは関係なく太陽と結婚させられたわけだからな」
よほど困った顔をしていたのか。
助け船を出してくれたのは、意外にもマリアちゃんだった。
「俺達とフツーに会話してっから忘れがちだけど。考えてみればマヒルちゃんみたいな王族って大変なんだもんな」
マリアちゃんに便乗してジョイさんが言った。
なんで、この人達はこんなに私に対して優しいのだろう。
カイくんがパンパンっとスケッチブックをたたいたので見ると。
「話がよくわからないけど。マヒル様は太陽様と喧嘩中?」
と書いてある。
「…考えてみたら、私。太陽様とまともに会話したことないのかも。本当はね、一緒に暮らしてるわけじゃないんだ」
みんなを見て言うと。
みんなは口を揃えて「知ってます」と言い放った。
「まあ…考えてみたら、太陽が娼婦姿であるあんたを見て文句言うのもおかしな話だもんな」
「あいつは世間知らずで、時折。馬鹿だけど。マヒルちゃんのこと大切にしていると思うんだよな」
マリアちゃんとジョイさんの言葉に。
「うん」と頷くことしか出来ない。
「俺はよくわかんねえけど。ちゃんと話し合うって大事だと思うよ。後悔のないように」
おちゃらけていたトペニが急にまともなことを言うので。
余計なお世話だ…と思ったけど。
みるみると冷静になって。
そりゃそうだよな…と気づいた。
怒りに任せて出てきてしまったけど。
話し合わなきゃ、何も始まらない。
太陽様は自分と結婚してしまったせいで。
国家騎士団での囮捜査に私が利用されてしまった…とでも思っているに違いない。
本当は、
国王の個人的な理由でしかない。
皆の前で非道な仕打ちを私にすることで。
王妃様の顔を立てるわけで。
世間では、国王の寵姫と言われる私を。
娼婦にさせ、王族との縁を切ることで。
これからの王妃との夫婦生活を円満にしようという魂胆ってワケだ。
と、同時に王様は偉いんだぞー。寵姫を堕落させることだって出来るんだぞー。
という戒めでもあり、威厳を保つ。
それを見せつけるための、私は道具でしかならない。
「さあて、腹もいっぱいになったし。順番にシャワー浴びて怖い話大会でもすっか。マヒルちゃんも泊まっていくだろ?」
トペニは既に自分の家のようにくつろいでいるので。
この人のコミュニケーション能力はバニラにも負けないぐらい凄いんだなと思った。
「泊まっても大丈夫?」
隣に座っていたカイくんに言うと、カイくんは頷いた。
「あのさ、太陽夫人。喧嘩してここに来たのはいいけどさ…」
家主の許可は取ったというのに。
マリアちゃんが怖い顔をして私を見ている。
「考えてもみろ。あんた以外、全員男だぜ。平気なのかよ」
「平気って、どういう意味・・・」
マリアちゃんがぼそぼそ言うので。
マリアちゃんの側に近寄る。
マリアちゃんは目が泳いでいる。
意外と、紳士なのかも。
思わず、笑ってしまう。
「アハハ。大丈夫、さっすがに今更。誰かに襲われてもギャーギャー言ったりしないから」
本当に何を今更…と思いながら笑ってしまうが。
皆は一瞬にして怖い顔をして私を見ている。
カイくんだけは意味がわからなそうに首を傾げているけど。
マリアちゃんは、わなわなと震えだすと。
「おいっ」と言って遠慮なく私の顔をつまんでアヒル口を作った。
「おまえ、冗談でも、絶対にそんなこと言うな!!」
まるで保護者のような言い方に、また笑いそうになったけど。
マリアちゃんの目はマジだった。
「つうか、マリアちゃんよ。マヒルちゃんを襲う前提で話してないかい?」
ニヤニヤ笑いながらジョイさんが言うと。
マリアちゃんは私の顔から手をはなして「てめえ」と言ってジョイさんに襲いかかった。
「おまえだって今、ぐわんっって来ただろ」
「ぐわん…って」
マリアちゃんとジョイさんがじゃれ始めて。
トペニは「片付けすっか」と言って台所へ行ってしまった。
すっとナズナくんが立ち上がって「ちょっと…」と言ってどこかへ行ってしまう。
セリくん、キキョウくん、カイくんたちもすっと立ち上がって部屋から出て行ってしまった。
「あの・・・、俺のお母さん娼婦だったんです」
「……」
驚いて思わず座っていた体制を崩してしまう。
周りを見ると驚いているのは私だけだ。
「俺のお母さん、一生懸命働いて俺を育ててくれました。だから、娼婦である母を嫌いになることなんて出来ません。どうして、大人は娼婦っていう仕事を嫌うんですか?」
「……」
声が出なかった。
「そもそも、あんたは国王に命令されて娼婦を演じたわけだろ? なんで旦那さんと気まずくなる必要があるんだ?」
トペニがお腹をさすりながら私に質問する。
気づいたら、寸胴鍋の中身はあと1/3ほどしかない。
残りわずかだと気づいたセリくんが大急ぎで自分の皿にシチューをよそう。
すっかりと暗くなってきた室内に。
カイくんは、すっと立ち上がってランタンの準備を始める。
私は、トペニの質問にすぐ答えることが出来なかった。
「ま、あれか。太陽夫人はそもそも、自分の意志とは関係なく太陽と結婚させられたわけだからな」
よほど困った顔をしていたのか。
助け船を出してくれたのは、意外にもマリアちゃんだった。
「俺達とフツーに会話してっから忘れがちだけど。考えてみればマヒルちゃんみたいな王族って大変なんだもんな」
マリアちゃんに便乗してジョイさんが言った。
なんで、この人達はこんなに私に対して優しいのだろう。
カイくんがパンパンっとスケッチブックをたたいたので見ると。
「話がよくわからないけど。マヒル様は太陽様と喧嘩中?」
と書いてある。
「…考えてみたら、私。太陽様とまともに会話したことないのかも。本当はね、一緒に暮らしてるわけじゃないんだ」
みんなを見て言うと。
みんなは口を揃えて「知ってます」と言い放った。
「まあ…考えてみたら、太陽が娼婦姿であるあんたを見て文句言うのもおかしな話だもんな」
「あいつは世間知らずで、時折。馬鹿だけど。マヒルちゃんのこと大切にしていると思うんだよな」
マリアちゃんとジョイさんの言葉に。
「うん」と頷くことしか出来ない。
「俺はよくわかんねえけど。ちゃんと話し合うって大事だと思うよ。後悔のないように」
おちゃらけていたトペニが急にまともなことを言うので。
余計なお世話だ…と思ったけど。
みるみると冷静になって。
そりゃそうだよな…と気づいた。
怒りに任せて出てきてしまったけど。
話し合わなきゃ、何も始まらない。
太陽様は自分と結婚してしまったせいで。
国家騎士団での囮捜査に私が利用されてしまった…とでも思っているに違いない。
本当は、
国王の個人的な理由でしかない。
皆の前で非道な仕打ちを私にすることで。
王妃様の顔を立てるわけで。
世間では、国王の寵姫と言われる私を。
娼婦にさせ、王族との縁を切ることで。
これからの王妃との夫婦生活を円満にしようという魂胆ってワケだ。
と、同時に王様は偉いんだぞー。寵姫を堕落させることだって出来るんだぞー。
という戒めでもあり、威厳を保つ。
それを見せつけるための、私は道具でしかならない。
「さあて、腹もいっぱいになったし。順番にシャワー浴びて怖い話大会でもすっか。マヒルちゃんも泊まっていくだろ?」
トペニは既に自分の家のようにくつろいでいるので。
この人のコミュニケーション能力はバニラにも負けないぐらい凄いんだなと思った。
「泊まっても大丈夫?」
隣に座っていたカイくんに言うと、カイくんは頷いた。
「あのさ、太陽夫人。喧嘩してここに来たのはいいけどさ…」
家主の許可は取ったというのに。
マリアちゃんが怖い顔をして私を見ている。
「考えてもみろ。あんた以外、全員男だぜ。平気なのかよ」
「平気って、どういう意味・・・」
マリアちゃんがぼそぼそ言うので。
マリアちゃんの側に近寄る。
マリアちゃんは目が泳いでいる。
意外と、紳士なのかも。
思わず、笑ってしまう。
「アハハ。大丈夫、さっすがに今更。誰かに襲われてもギャーギャー言ったりしないから」
本当に何を今更…と思いながら笑ってしまうが。
皆は一瞬にして怖い顔をして私を見ている。
カイくんだけは意味がわからなそうに首を傾げているけど。
マリアちゃんは、わなわなと震えだすと。
「おいっ」と言って遠慮なく私の顔をつまんでアヒル口を作った。
「おまえ、冗談でも、絶対にそんなこと言うな!!」
まるで保護者のような言い方に、また笑いそうになったけど。
マリアちゃんの目はマジだった。
「つうか、マリアちゃんよ。マヒルちゃんを襲う前提で話してないかい?」
ニヤニヤ笑いながらジョイさんが言うと。
マリアちゃんは私の顔から手をはなして「てめえ」と言ってジョイさんに襲いかかった。
「おまえだって今、ぐわんっって来ただろ」
「ぐわん…って」
マリアちゃんとジョイさんがじゃれ始めて。
トペニは「片付けすっか」と言って台所へ行ってしまった。
すっとナズナくんが立ち上がって「ちょっと…」と言ってどこかへ行ってしまう。
セリくん、キキョウくん、カイくんたちもすっと立ち上がって部屋から出て行ってしまった。