色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 順番にシャワーを浴びていったんだけど。
 私が一番最後で。
 居間に戻るとトペニが「年下殺し」と言い放ったので。「なんでえ!?」と口を尖らせる。
 みんなは囲炉裏をぐるっと囲って座っていて。
 私はマリアちゃんとカイくんの間に座った。
 急に座ったもんだから、マリアちゃんはぎょっとしたふうに私を見た。
「おい、あんたは男殺しか!」
「なんで、意味わかんないこと言うの?」
 今日はずっとマリアちゃんは私に冷たいことを言う。

 カイくんは私の袖をぐいぐい引っ張ると。
「かわいい」と書いたスケッチブックを見せてくれた。
 白い光沢感のあるネグリジェ姿に着替えただけなのに。
「年下殺し」「男殺し」そして「かわいい」と言われる始末…。

「カイはいいなあ。こんな綺麗な人と一緒に寝泊まりしてたんだろ」
「セリ、俺は緊張して無理だよ。たまにくらいがちょうどよくね?」
 カイくんの隣に座っているセリくんとキキョウくんの会話にちょっと嬉しくなる。
 ナズナくんはずっと黙ってしまっているけど…。
「ナズナくん、大丈夫? 元気ないけど」
 トペニの横で落ち込んでいるように見えたナズナくんに話しかけると。
 ナズナくんは身体を震わせて「大丈夫です」と言った。
「マヒル様。ナズナは緊張してるだけですから」
「そうそう。さっき、緊張しすぎて吐きそうって言ってましたよ」
 セリくんとキキョウくんの会話にトペニが「うひゃひゃひゃ」と大笑いした。
「全員揃ったし、怖い話でもしていきますかー」
 気づけば、トペニが司会者となって怖い話大会を進めていく。

 違和感なくトペニがとけこんで。
 みんな仲良く怖い話しているのが不思議な気もしたけど。
 その夜は、それぞれがとびっきりの怖い話をして。
 気づいたら明け方まで話し込んでしまった。
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