色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 考えてみたら、マリアちゃんと一対一で話すのは初めてなので。
 少しだけ緊張した。

 2日目だけれど、見慣れないマリアちゃんの私服姿。
 朝日に照らされるマリアちゃんの美しい顔。
 寝不足のせいか腫れぼったい目にくっきりとした鼻に血色の良い唇。
 祖国でもこんなに女性的な人って出会ったことがないと思う。
 それでいて血管浮き出た腕に引き締まった身体は騎士だという証なワケで…
「あのさ、太陽夫人」
 彼だけは、私を絶対にマヒルと呼んだりしない。
 律儀な呼び方に「何でしょう」と敬語になる。
「俺は別に、あんたにどうこう言う気はねえけどよ・・・」
 マリアちゃんはじっと私を見る。
「あんたには、あんたで出来ることがあると思うんだ。それを実行してほしいだけだ」
「私に出来ること・・・?」
 ぷいとマリアちゃんは目をそらして黙ってしまう。
「それって、トペニのこと?」
「さあな」
 急にぶっきらぼうになってしまったマリアちゃんにどうしていいのかわからない。
 どうしたものか…と思ったけど。
 マリアちゃんと話す機会は今しかないなと考えて。
「あの、マリアちゃんとジョイさんって結局のところ階級上がったんですよね?」
「…なんだよ、急に」
「いやっ。何でもないです。忙しいってことですよね?」
 マリアちゃんが殺気を出してきたので慌ててしまう。
 マリアちゃん単体だけど、扱いが難しい。
 やっぱり横にジョイさんがいてくれるほうが話しやすいことがわかった。
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