色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 ビミョーな空気の中、馬車が家の前で止まった。
 かつて蘭様にこの家を追い出され、ぼっろぼろの家をリノベして住んだわけだけど。
 やっぱり家というと、こっちの方がしっくりくる。

「マリア様、ありがとうございました」

 馬車を降りる際、手を貸してくれたマリアちゃんは。
 紳士だ。
「自分の身体、大事にしろよ。じゃあな」
「ほんと、保護者ですわね。それでは」
 ぺこりと頭を下げる。

 家に入るまでマリアちゃんはじっとその場を動かないでいた。

「ただいまー」
 マリアちゃんに聞こえるように大声で言って。
 玄関のドアを閉めると。
 馬車が動く音が聞こえた。
 マリアちゃんが帰ったようだ。

 やれやれ…と思いながら。
 リビングへ行くと。
 とんでもない光景が目に入った。
 足元に何かが転がっている。
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