色褪せて、着色して。~沈丁花編~
「はい?」
 強盗でも入ったのかと思い、声を失う。
 両手両足をロープで固定され、毛虫のようにウネウネしているのは、
 …太陽様だ。
「あ、セシルさん。おかえりなさい」
 ロープで縛られているというのに。
 太陽様は笑顔で言ったので。
 私は、喉からヒューという声が出て後ずさった。

「マヒル様、おかえりなさいませ」
 キッチンのほうから颯爽と出てきたのはバニラだ。
「ねえ、何で。太陽様縛られてるの? ていうか、何があったの」
 想像も出来なかった光景に。
 バニラに対して大声が出てしまう。
 バニラはにっこりと微笑んだ。

「太陽様がマヒル様を傷つけたからですわ」

 説明しよう。
 バニラは、妖精であり魔法は使えないけど妖精の力が使えて。
 見た目は可愛い女の子である。
 だが、その笑顔の裏に秘められた悪魔のような心に。
 私は悟ったのだ。
 …バニラは最強だ。
< 72 / 74 >

この作品をシェア

pagetop