色褪せて、着色して。~沈丁花編~
「は、はじめまして。セシル・マルティネス・カッチャーです」
 私は慌てて頭を下げる。
 想像していた以上の人物が登場したので心臓がバクバクしていた。
 私自身、美人だとわかっているけど。
 見た瞬間に「負けた」と素直に思った。

 この感覚は、バニラを初めて見たときに似ている。
 綺麗だとか、可愛い人は沢山いるけど。
 次元が違う…という言葉が相応(ふさわ)しい。

 王族の女性といえば、カレン様とスズラン様だけど。
 2人とも、どこか気品の中に庶民の匂いがあった。

 目の前に立つ、王妃はまるっきり違った。
 彼女は住む世界の違う…歴史上の偉人のような緊張感のあるオーラを出していた。

 緊張してうつむいている私にバニラがそっと花束を持ってきてくれたので。
「お茶会にお招きいただきありがとうございます。コレ…そのプレゼントです」
 しどろもどろになって花束を渡そうとすると。
「ふんっ」と言って、王妃の侍女が奪うように花束を掴んだ。
 王妃様に見とれて気づかなかったが、背の高い侍女だ。
 私も高い方だけれど、目の前の侍女は174~175cmくらいはあるのではないだろうか。
 色白の肌に長い手足で。
 ぎょっとしたのは、服装だった。
 襟元にフリルのついたブラウス。
 スカートは濃淡のあるブルーのスカート。
 スカートが膝よりも短く。
 細い足が丸見えだった。

 この国ではあまり肌の露出をしている人を見たことがないので。
 侍女のくせに、なんちゅう格好しているんだ…という冷めた目で見てしまう。

「素晴らしい花束をありがとう。どうぞ、お座りになって」
 女神のような、ふんわりとした優しい王妃に。
「はい」と小さく答えた。
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