色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 王妃は目立つドレスを着ていた。
 朱色の鮮やかなドレスだ。
 肩を出したセクシーなドレスで胸元には大きなリボンが付いている。

 丸い輪郭に大きな目は琥珀色をしている。
 どこか猫を連想させる目だなと思った。
 特徴的なのは、太い眉毛と。
 異常なくらい長い髪の毛だ。
 後ろに垂れている髪の毛は地面につきそうなくらいだ。

 意地悪そうな侍女が紅茶やお菓子を用意してくれて。
「いただきます」
 とお行儀よく王妃がティーカップを口につける。
 私はちらりとバニラを見て。
 ドキドキしながら「いただきます」と言って紅茶に口をつけた。
 もし、毒が入っていたら、すぐにバニラが気づくはずだ。

 そよそよと風がなびくだけで。
 辺りは何も音が聞こえなかった。
 花の匂いだけがする。
 時折、白い蝶がふわふわと飛んでいる。
「ずっと、お会いしたいと思っていたのに。今頃になってしまって…」
 話を振ったのは、王妃からだ。
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