あ
「じゃあ明日から入ってね。」
「はい!ありがとうございました!よろしくお願いします!」
そう言ってお辞儀をしてから店を出る。
美澄文華、16歳。
高校と大学をすっ飛ばして、明日から社会人です。
それにしても憧れてた大人の仲間入りがラーメン屋のアルバイトとは。
思ってたのとちょっと違ったけど、そんなこと気にしてるほどの余裕もないんだよな。
中卒で大した経歴もない私が雇ってもらえただけ丸儲けってやつだ。
だってウチにはお金が必要。なんせ借金地獄状態なんでね。
私が働かなくちゃやっていけない。
私のお母さんは私が3歳のときに家を出ていっちゃって、今はお父さんと二人で暮らしている。
お父さんも仕事頑張ってくれてるけどなかなか借金を返しきれてなくて、常に貧乏状態の我が家で私とお父さんはお互い励まし合い、支え合いながら共に戦っている・・・。
「文華ぁー!」
突然後ろから呼び止められてビクッとする。
「お父さん・・・。」
「探したぞ。ちっと金貸してくれない?午前中パチンコで全部スッちやって昼飯代が足りないんだわ。」
共に戦っている・・・わけがない。
目の前にはタバコを口にくわえて両手をポケットに突っ込んだだらしない男。
開口一番金を要求とはいかがなものか。
「・・・わかったよ、はいこれ。」
「おう、さんきゅー。」
ポケットから1000円札を出してお父さんに渡すと、ひらひらと手を振りながら歩いて行ってしまった。
やれやれ・・・ってちょっと待てよ?そっちパチンコの店がある方向じゃない?