暴君御曹司のお気に入り
こ、こいつ、、、!

乙女心のおの字も分かってないと言いたいところだが、彼なりに気を使っているのもわかる。

「う、うん!ところで湊、他に言うことは?」

「あ?他に、?」

「たとえば髪とか服とか、、、」

「そう言われたって、、、紬はいつもかわいいし、、、」

それ以外は分かんねえよと湊が頭を搔く。

「え、、そ、そうかな!うん、そうだよね!何でもない!」

我ながらチョロいとは思ったが、湊のその言葉に途端に機嫌がよくなった私は腕を組み直し、呟いた。

「湊も今日もかっこいいよ」

「、、、は?」

私の言葉に、湊の顔が赤くなる。

そして私の顔を覗き込むと、サングラスを外した。

「湊、、?」

2人の距離が縮まって、視線と視線がぶつかる。

湊の顔が近づき、私は目を瞑った。

瞼を閉じたあとすぐに、唇に生暖かいものが触れる。

その時間は1秒にも1分にも感じられた。


重なっていた唇が離れると、湊も私も照れて何も言えないまま俯いた。

「行くぞ」

暫しの沈黙を破ったのは湊だった。

「うん!!」

差し出された手を強く握り返して大きく頷いた。
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