暴君御曹司のお気に入り
「お、おいしそう、、、」

目の前に並べられた料理を見て思わず呟く。

私が選んだのは熱帯魚の丸焼きだ。

ただでさえ特徴的な顔をしているのに、丸焼きにされてさらにグロテスクな風貌になった魚を見てうっとりとする。

一体どんな味がするのだろうか、、。

「庶民はそんなものを食うのか、、？」

当たり障りのないような料理を選んだ綾川は、私の元まで運ばれてきた料理を見て目を見開いている。

「私もこれは初めて食べるけど、、」

私がそう答えると同時に綾川の頼んだ料理も運ばれてきた。

聞いたことのない、横文字のおしゃれな料理だ。

「「いただきます」」

両手を合わせたその次の瞬間に私はフォークを手にしていた。

熱帯魚の「早く食べて」と言わんばかりの美味しそうな匂いに、思わずフォークを握る手に力が入る。

熱帯魚をフォークで突き刺し口に入れる。

その瞬間、私の意識は熱帯の海へと飛んだ。

綾川は終始「なんなんだこいつ、、、」と言わんばかりの目で私のことを見ていたが、熱帯へと意識が飛んでいた私にとっては関係の無い事だった。
< 20 / 108 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop