暴君御曹司のお気に入り
ドアを開けると既に空は暗くなりつつあった。

伸びた影を眺めながら並んで歩く。

「今日、思ってたより楽しかった。ありがとう」

「な、なんだよ急に!!!」

綾川が驚いたように私の顔をまじまじと見た。

「私だってお礼くらい言うし」

「ふーん」

少しの間沈黙の時間が流れる。

「、、あのさ!」

なんの脈絡もなく、急に綾川が立ち止まって声を張り上げた。

「えっ!!?なに?」

思わず振り返ると、綾川は真剣な顔でこちらを見ていた。
その眼差しに思わず目を離せなくなる。

「もし良かったら、、、来ないか?」

「え?どこに?」

大切そうなところが聞き取れず首を傾げる。

「だから、パーティーだよ」

「パーティー、、?」

今までの私の人生には凡そ1度もなかったイベントだ。
精々、小学生のときのクリスマスパーティーくらいしか記憶がない。

「ああ。俺の家の会社の創立記念日に、毎年パーティーを開催するんだよ」

庶民は知らないだろうが、という風な口調で綾川が答える。

「でもそれって私が行って大丈夫なやつなの?」

「まあ友達呼んだこともあるし、一般人も全然入れるぞ。ス〇バ奢ってもらったお礼に来てほしいんだよ」

こいつ友達いたのか、、、それもパーティーに呼ぶくらいの親しさの人。
それに、ス〇バのお礼にパーティーなんて大袈裟すぎないだろうか。

「でも、、、」

綾川とはこれっきり会わないつもりでいたのに、、、。

「美味いもんいっぱいあるぞ!どうだ、来たいだろ?」

い、行きたい、、、!!!

綾川の魅力的な発言に、私の躊躇いは一瞬で粉砕された。

「、、まあ行ってやらないこともないわよ」

私の返事に綾川の顔はパッと明るくなる。

「パーティは再来週の土曜日だからな!ちゃんと空けとけよ!!」

はしゃぎ出す綾川をいさめながら歩き続け、人通りの多い道に出るとすぐ駅が見えた。

「それじゃあ私は電車に乗るから、、」

軽く右手を上げてひらひらと綾川に振る。

「おう!パーティの詳細を後でL〇NEに送るからちゃんと読んどけよ!」

「はいはい」

満面の笑みで大きく手を振る綾川に見送られながら、私は駅に向かって歩き出した。
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