暴君御曹司のお気に入り
「ここら辺で適当なもん買って食うか」

立ち並ぶ店はシャッターが降りてるものもあったが、空いてる店も多かった。
何より人が少なかったので、腹を空かせていた俺はここらで一旦休憩しようと思った。

しかし、そこで俺は財布を忘れたことに気づいてしまった。

「最悪だ、、、いつもはあいつらが持ってるから、、、」

普段は自分で財布を出すことなどほとんどないので、俺は今日もいつものように手ぶらだったのだ。

これではどうしようもないと仕方なく踵を返す。

そして、狭い道に入った時、前の方から一人の女が歩いてきているのが見えた。

俺が近づいているというのに、道の脇に避けることもなく堂々と真ん中を歩いている。

だが俺も避けるつもりは無い。
きっと目の前の女は俺の顔が見えていないだけなのだろう。

財布を忘れたことで少々気は立っていたが、これくらいのことで怒っては財閥の息子として示しがつかないと思い、黙ったまま歩き続けた。

そして、俺は何かにぶつかった。
< 3 / 108 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop