暴君御曹司のお気に入り
門から屋敷までの長い道のりを歩き、とうとうその扉までたどり着いた。

「どうぞ」

親切にも竹岩さんが扉を開けてくれる。

中に入ると、眩しいくらいに輝くシャンデリアや、売ったら数億にもなりそうな置物たちがちらりと見えて思わず目を瞑ってしまった。

「じゃあ後はよろしく」

私があんぐりと口を開けながら屋敷を見回していると、綾川が数人のメイドにそう言って私を押し付けた。

メイドを生で見たのは初めてだけど、雇われてる身分なのに私よりいい服を着ている。

まあ財閥の家に雇われてるなら当たり前か。

そんなことを思いながら不躾にメイドたちをじろじろと見る私に嫌な顔もせず、彼女たちは恭しくお辞儀をしてくれた。

「紬様ですね。お坊ちゃまからいろいろお聞きしております。今日は私たちが目いっぱい綺麗にドレスアップさせますので」

そんなメイドの言葉に、また自分の服装を思い出して恥ずかしくなる。

それにしても「いろいろお聞きしている」ってどんなことを話されているのだろうか。

気になったが、気付くと綾川は竹岩さんを連れてさっさと長い廊下を歩いて行ってしまっていた。

「それでは私たちもドレスルームに向かいましょう」

綾川の後に続いて、私も数人のメイドたちとドレスルームとやらに歩き出した。
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