暴君御曹司のお気に入り
軽く1時間ほどフワフワな椅子に座らせられて髪や顔をいじられていたせいか、気付いたときには寝てしまっていた。

「紬様」

と私を呼ぶ声でハッと目を覚ます。

「は、はいっ！！！！」

勢いよく飛び起きて返事をしてしまったが、周りに複数人のメイドがいることに気づき、状況を把握して恥ずかしくなった。

「あ、すみません、、、」

｢いえ、、、それよりも紬様、とてもお綺麗ですよ｣

そう言って1人のメイドが私を大きな姿見の前まで連れていった。

「え、、、」

そこに映る私は、まるで初めましての女の人だった。

｢すごい、私じゃないみたい、、｣

そう呟いた後で、目元や口に少し私の面影があることに気付く。

ここに映る女の人は紛れもなく私だ。

それだけでなく、さっきまでボサボサだった髪も艶々になっている。

まるで劇的ビフォーアフターだ。

「ここまでしてもらえるなんて、」

今までお洒落とは無縁だった私がこんなに小綺麗になっているのがとても新鮮で何故だか気恥ずかしかった。

< 34 / 108 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop