暴君御曹司のお気に入り
｢そういえばちょうどお坊ちゃまも支度が終わったそうですよ、見に行かれますか？｣

「え？あ、はい！」

メイドの問いかけに、条件反射のように答える。

綾川も私のように驚くほどの変貌を遂げているのだろうか。

メイドの後に続いて広いドレスルームを歩く。

同じ空間で綾川もおめかししていたのかなどと考えていると、前方に竹岩さんが見えた。

「あ、お坊ちゃまがいらっしゃいますよ」

そんなメイドの嬉しそうな声と同時に、竹岩さんの後ろから綾川の姿が見えた。

「あ、、、」

ふっと顔を上げた綾川とばっちり目が合い、思わず声が出る。

着替えた綾川がいつもとは違う風に見えて思わず目を逸らした。

紺のスーツなんて柄じゃない。

いつも派手でダサい服を恥ずかしげもなく着ている綾川と今の綾川とでは、まるで別人のようだ。

いつもは下ろしている前髪を上げているのもあるのだろうか。

不覚にも彼の顔の良さを再認識させられた。

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