暴君御曹司のお気に入り
「ったく私をなめてるにも程があるわよ」
ぶつぶつと呟きながら、何とか見つけ出したトイレの中に入る。
うちのトイレの数十倍もある広さに感嘆しつつ、本当は大して行きたいわけでもないので鏡の前で髪を整えてみる。
どこからどう見ても完璧美少女の私に向かって「庶民」だなんて失礼極まりない。
まあ別に綾川なんかと釣り合わなくてもいいけど。
それにしてもこれからどうやって時間を潰そうかとため息をついたその時。
淡いピンク色のドレスを着た女の子がスっと私の横に並んだ。
綺麗に巻かれた髪やその服装からして、明らかに上流階級の子だ。
お嬢様でもトイレ行くんだなと訳の分からないことを考えつつ、なんだか気まずいので個室に篭ろうと鏡に背を向けたが、
「、、、貴方、湊さんの何?」
そんな、明らかに私に向けられているであろう声を耳にしてしまい、立ち止まる。
「何、とは、、?」
質問の意図を図りかねて振り返ると、ばっちりそのお嬢様と視線が合ってしまった。
目鼻立ちの整った、気の強そうなその子を前にし、私はうんざりとする。
「わかってるくせに。ねえ湊さんとどういう関係なわけ?」
「そんなの知りません。今日だって誘われたからパーティーに来ただけです」
ため息混じりにそう返すと、彼女の眉は一気につり上がった。
確かに今の私はものすごく感じ悪いけど、お嬢様相手に怯むような情けない真似はしない。
「どうして湊さんが貴方なんか誘うの?どこの令嬢でもないんでしょう?どうやって取り入ったのよ」
彼女が、できるだけ冷静でいようと努めているのがわかる。
けれど、隠しきれない苛立ちがその声に滲んでいた。
「取り入るって何ですか?私があいつの友達じゃいけないんですか?偉いとこの令嬢は他人の交友関係に口出しできる権力までお持ちなんですね」
真っ直ぐに彼女の目を見つめて吐き捨てる。
今日は美味しい料理を食べられると思ってパーティーに来たのに、変な人に絡まれてばかりで少しも楽しくない。
「はぁ!?馬鹿にしてるの?湊さんに相手にされてるからっていい気にならないで!」
私の言葉に相当気分を害したのか、彼女も負けじと声を荒らげてきた。
せっかくの綺麗な顔が恐ろしいことになっている。
これ以上刺激してしまうと、とっ掴み合いの喧嘩になってしまうかもしれない。
「馬鹿にしてるのはそっちでしょ。何の妬みか僻みか知らないけど、だる絡みしてこないでください」
私はそれだけ言い残すと、彼女の顔を見ることも無くトイレを飛び出した。
もう二度とこの子と会うことがありませんようにと強く願いながら。
ぶつぶつと呟きながら、何とか見つけ出したトイレの中に入る。
うちのトイレの数十倍もある広さに感嘆しつつ、本当は大して行きたいわけでもないので鏡の前で髪を整えてみる。
どこからどう見ても完璧美少女の私に向かって「庶民」だなんて失礼極まりない。
まあ別に綾川なんかと釣り合わなくてもいいけど。
それにしてもこれからどうやって時間を潰そうかとため息をついたその時。
淡いピンク色のドレスを着た女の子がスっと私の横に並んだ。
綺麗に巻かれた髪やその服装からして、明らかに上流階級の子だ。
お嬢様でもトイレ行くんだなと訳の分からないことを考えつつ、なんだか気まずいので個室に篭ろうと鏡に背を向けたが、
「、、、貴方、湊さんの何?」
そんな、明らかに私に向けられているであろう声を耳にしてしまい、立ち止まる。
「何、とは、、?」
質問の意図を図りかねて振り返ると、ばっちりそのお嬢様と視線が合ってしまった。
目鼻立ちの整った、気の強そうなその子を前にし、私はうんざりとする。
「わかってるくせに。ねえ湊さんとどういう関係なわけ?」
「そんなの知りません。今日だって誘われたからパーティーに来ただけです」
ため息混じりにそう返すと、彼女の眉は一気につり上がった。
確かに今の私はものすごく感じ悪いけど、お嬢様相手に怯むような情けない真似はしない。
「どうして湊さんが貴方なんか誘うの?どこの令嬢でもないんでしょう?どうやって取り入ったのよ」
彼女が、できるだけ冷静でいようと努めているのがわかる。
けれど、隠しきれない苛立ちがその声に滲んでいた。
「取り入るって何ですか?私があいつの友達じゃいけないんですか?偉いとこの令嬢は他人の交友関係に口出しできる権力までお持ちなんですね」
真っ直ぐに彼女の目を見つめて吐き捨てる。
今日は美味しい料理を食べられると思ってパーティーに来たのに、変な人に絡まれてばかりで少しも楽しくない。
「はぁ!?馬鹿にしてるの?湊さんに相手にされてるからっていい気にならないで!」
私の言葉に相当気分を害したのか、彼女も負けじと声を荒らげてきた。
せっかくの綺麗な顔が恐ろしいことになっている。
これ以上刺激してしまうと、とっ掴み合いの喧嘩になってしまうかもしれない。
「馬鹿にしてるのはそっちでしょ。何の妬みか僻みか知らないけど、だる絡みしてこないでください」
私はそれだけ言い残すと、彼女の顔を見ることも無くトイレを飛び出した。
もう二度とこの子と会うことがありませんようにと強く願いながら。