暴君御曹司のお気に入り
《湊side》

おかしい。
いつもなら割と早めに返信してくるアイツが、今日は既読すらつけてこない。

今朝は、宇宙人みたいな変なスタンプを返してきたのに、その後に俺が送った文はまだ見てもいないのだ。

学校ならとっくに終わった頃だろう。
俺も1時間ほど前に高校から帰ってきた。

『次は映画館なんてどうだ!?』

この文のどこかにアイツを怒らせるような何かがあったのだろうか。

女は難しいな、と画面を睨みながら頭を搔く。

「お坊ちゃま、そろそろ勉強でもしたらどうですか?1時間以上ずーっとベッドに寝転がって携帯ばかり見て、だらしないですよ」

部屋にズカズカ入ってきた竹岩にそうため息をつかれ、俺は聞こえないフリをする。

「昨日あんなに楽しんだんですから、そろそろ切り替えてください」

「、、、でもアイツから返信が来ねえんだよ」

「紬様ですか?まだ学校にいらっしゃるか、疲れて家で寝ているかしているんでしょう。そうやって恋愛にうつつを抜かしてばかりいるなら、もう彼女には会わせませんよ」

散らかった俺の机の上をテキパキ片付けながら、竹岩が俺に厳しい口調でそう諭した。

「れ、恋愛なんかじゃねえよ!そろそろアイツも俺に落ちた頃だろうと、、、」

「ああ、復讐がどうのだとか仰っていましたね」

「そうだよ!アイツが告白してきたら俺は笑いながらこっぴどくフッてやるって決めてたんだ」

ベッドから起き上がり、机の引き出しから1枚の紙を取り出す。
俺が緻密に練った完璧な計画が記されているものだ。

「ははっ。アイツの泣いて悲しむ顔を想像すると、、」

笑いながらそこまで言って、言葉に詰まった。

アイツの悲しげな表情が頭に浮かんで、何とも言えない気持ちになる。

「、、、」

まあ、あいつが涙を零すことなんて、世界が滅亡する直前くらいしかないだろうという気がした。

それか俺にフラれた時。

でも、俺がアイツをフッてしまったらもう2人で遊ぶことも無くなるんだな。

最近はずっとアイツを連れ回していたせいで、アイツがいなくなったら何をして暇を潰したらいいかちっとも思いつかなかった。

「お坊ちゃま、そんな顔してどうしたんですか」

竹岩の心配そうな声でハッとする。

別に、アイツなんかいなくたって俺は毎日楽しく過ごせるし、女なんて選びたい放題だ。
わざわざ気にすることじゃない。

「何でもねえよ」

そう呟いて、相変わらず返信が来ないで黙っている携帯を放り投げた。
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