暴君御曹司のお気に入り
京極くんが手配してくれた高級車に1時間くらい揺られて、会場であるグランドホテルについた。

今回のパーティーのメインは私たちの作ったアイスの宣伝だ。

色々なアイスの企業のお偉いさんが見に来ることに緊張を覚えながらも、必死にステージで述べる予定の祝辞を頭で反芻する。

「あ、紬ちゃん」

車から降りるとすぐ目の前に京極くんが立っていた。

「思っていたより早い到着だね。遅刻してくるんじゃないかとヒヤヒヤしてたよ」

彼のそんな失礼な言葉に私は余裕の笑みを浮かべた。

「まあ私も成長したってことよ」

挨拶もそこそこに私たちは会場に入る。

既にテーブルや椅子が整然と並べられており、その上には私たちのアイスが所狭しと置かれていた。

なんだかいつかのパーティーを思い出す。

「京極くん、私を商品開発に誘ってくれてありがとうね」

目の前の景色を見て、あの時商品開発の誘いを受けて良かったと心の底から思った。

「どうしたの急に、もしかして明日は豪雪？」

「こんな真夏に雪が降りそうなくらい今日の私は可愛いってこと？」

「よくわからないけど多分ちがうと思うよ」

そんな他愛もない会話をしながら、私たちはステージ裏へと準備をしに行った。
< 82 / 108 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop