暴君御曹司のお気に入り
カウントが進むものの、足が震えて動くことができなかった。

そして手を触れさせたことでさらに気付いたが、多分このタイマーのようなものはタワーの中にも埋め込まれている。

中から聞こえてくる唸り声はそれだろう。

5、4、と減っていく数字を見つめ、もうだめかもしれないと絶望的に思った。

会場のざわめく声が、自分の心臓の音で掻き消される。

「紬ちゃん!!!!早くそこから逃げて!!」

遠くから京極くんの焦った声が聞こえる。

目の前の数字がとうとう1になり、

終わった、とギュッと目を瞑った。

ああ、こんなことになるならさっき綾川に会った時に2年前に伝えたかったことを全部伝えれば良かった。

私の人生、こんなんばっかりだ。

最後の最後なのに、頭に浮かぶのは「最悪」という文字だけ。

次に生まれ変わるときは超絶美人美少女ラッキーガールになりますように、、、

そしてその時は綾川に、、、

「うおおおおお!!!!!」

気のせいか、誰かが私に向かって走ってくる気配がする。

その気配を感じるとともに、腕を強く引き寄せられた。

と同時に、目の前が白い光に包まれ、耳をつんざくような大きな爆発音が鳴った。
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