初恋の終焉〜悪女に仕立てられた残念令嬢は犬猿の仲の腹黒貴公子の執愛に堕ちる


(寝られないわ……)

 皆と別れ私室へと戻って来たまでは良かった。日課の読書を終わらせ、いざベッドへと入った訳だが睡魔が訪れない。

 右にゴロゴロ、左にゴロゴロしてみても、羊を何百匹と数えてみてもダメなのだ。

 寝られない原因など分かりきっている。あの続き扉が気になって気になって仕方がない。

「ミリアが去り際にあんな事言うからいけないのよ!」

 ガバッと布団を跳ね除け起き上がったエリザベスは髪を掻きむしる。結果、艶のない髪がさらにゴワゴワだ。

(どれもこれも全て、ハインツ様のせいよ! 本当、何で来るのよ)

 隣の部屋で健やかな寝息を立てているであろう人物を頭に思い浮かべ、エリザベスの心の中は乱れに乱れる。

(あぁぁ、ムカつく!)

 身勝手な八つ当たりをしていることは棚にあげ、エリザベスは続き扉へと目をやる。

(まさか、開いて無いわよね?)

 去り際に言われたミリアの言葉が頭をクルクルと回り落ち着かない。ちょっと調べるだけと自分に言い聞かせて、そっとベッドを降りたエリザベスは、ゆっくりと扉へと近づきドアノブへ手をかけひねった。

(ウソっ!? 開いちゃった……)

 カチャッと小さな音を立て、扉がわずかに開く。開いてしまった扉を見つめ、閉めねばと思えば思うほどドアノブを掴む手を離すことが出来ない。

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