初恋の終焉〜悪女に仕立てられた残念令嬢は犬猿の仲の腹黒貴公子の執愛に堕ちる

追いつめられる


「寝られなかった……」

 ボソっと呟いたエリザベスの言葉が暗い部屋に虚しく響き散っていく。ハインツの部屋を逃げ出し私室のベッドへ潜り込んだエリザベスだったが、その後寝られる筈もなく一夜を明かした。

 布団に潜り込み、止めどなく流れる涙をどうする事も出来ず、ただただ震えることしか出来なかったエリザベス。

(ハインツ様は、どうしてキスなんてしたの?)

 その疑問が今もエリザベスの頭をグルグルと回り続けている。

 いつもの揶揄いの延長だったとしても度が過ぎている。それに、そんな幼稚な行動をとる男でない事はエリザベスも分かっていた。

(もう、考えるのはやめよう。今は、ホスト役という大任がある。ハインツ様に振り回され、失敗すればそれこそ一生の恥だわ)

 暗い部屋でウジウジと考えているから、昨晩の事ばかり頭に浮かぶのだ。陽の光を浴びて、爽やかな空気を吸えばスッキリする。

 布団を跳ね除け起きあがったエリザベスは、スタスタと窓へ近づき勢いよくカーテンを開けた。

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