初恋の終焉〜悪女に仕立てられた残念令嬢は犬猿の仲の腹黒貴公子の執愛に堕ちる
「さて本題に入りましょうか。なぜ、私がベイカー公爵領に来たかを」
「えっ……、えぇ」
「ベイカー公爵家とシュバイン公爵家の婚約を成立させるため、と言ったら貴方はどうしますか?」
「……」
ハインツの言葉にエリザベスが驚くことはなかった。ハインツがベイカー公爵領に来た時から考えていた。エリザベスとウィリアムとの婚約が破棄されたあのタイミングでハインツが現れれば、その理由はしぼられる。しかし、ずっと確信が持てずにいた。なぜなら、グルテンブルク王国には破ってはならない暗黙のルールがあるからだ。
『公爵家同士は姻戚関係を結ぶ事を禁ずる』
グルテンブルク王国の四大公爵家は地位もさる事ながら、権力、財力共に他の貴族家とは比べものにならない程の力を有している。故に、公爵家同士が姻戚関係を結べば、王家に匹敵する力を有する事に他ならない。だからこそ、公爵家同士の婚姻は許されていないのだ。
その暗黙のルールがある限り、ハインツとの結婚はあり得ない。そんな事を、目の前の策士が知らない訳がない。だからこそエリザベスはずっと、彼の目的に確信が持てなかった。
「意外ですね。あまり驚かれていないように感じる」
「えぇ、全く驚いていないわ。だって、ハインツ様の話は荒唐無稽の作り話ですもの。公爵家同士の婚姻? 馬鹿じゃないの。それが不可能な事くらい貴族の誰もが知っているわ」
「公爵家同士の婚姻、確かに不可能ですね。今のままでは――、と注釈をつけておきましょうか」
「どう言うことよ!? それではまるで、未来では可能になると言っているようなものじゃない」
腕を組み笑みを浮かべていたハインツの態度が変わる。心底おかしいとでも言うように笑い出したハインツの様子を見て、エリザベスの頭はさらに混乱していく。
(……公爵家同士が婚約する方法を知っているなんて言わないわよね)
「くくく……、近い将来、ベイカー公爵家とシュバイン公爵家は姻戚関係を結びますよ。そのための布石は打ってきたつもりだ。ただ、一番厄介な御仁から、ある条件を出されましてね」
姻戚関係を結ぶ!? あり得ないわ……
ちょ、ちょっと待って……
結婚すると言われたことよりも黒い笑みを浮かべ、こちらへと近づいて来るハインツに恐怖を覚えエリザベスが後ずさる。スッと伸ばされたハインツの手を払い除ける事も出来ず、エリザベスはただ捕まるしかなかった。
「実はね、エリザベス。貴方と婚約するには、貴方の許可が必要なのですよ」
「えっ?」
耳元で囁かれた言葉に、エリザベスの頭が混乱していく。
(私の許可が必要って、いったいどう言う事よ?)
今後に関しては全て父に一存している。次の婚約者が誰になるのかも、はたまた利用価値無しとして修道院に入れるかも、父の心ひとつだ。そこにエリザベスの意志は関係ない。ウィリアム王子との婚約に際し散々わがままを言って来たエリザベスは、父の意向に従うつもりだ。父宛の手紙にも、その旨は書いていた。父がその事を知らない訳がない。
それなのに目の前の男は、公爵家同士の婚姻が私の一存で決まると言っているのだ。
(まさか、それすらも私を騙すための嘘なの?)
ハインツが何を考えているのか分からない。だからこそエリザベスは怖かった。
「えっ……、えぇ」
「ベイカー公爵家とシュバイン公爵家の婚約を成立させるため、と言ったら貴方はどうしますか?」
「……」
ハインツの言葉にエリザベスが驚くことはなかった。ハインツがベイカー公爵領に来た時から考えていた。エリザベスとウィリアムとの婚約が破棄されたあのタイミングでハインツが現れれば、その理由はしぼられる。しかし、ずっと確信が持てずにいた。なぜなら、グルテンブルク王国には破ってはならない暗黙のルールがあるからだ。
『公爵家同士は姻戚関係を結ぶ事を禁ずる』
グルテンブルク王国の四大公爵家は地位もさる事ながら、権力、財力共に他の貴族家とは比べものにならない程の力を有している。故に、公爵家同士が姻戚関係を結べば、王家に匹敵する力を有する事に他ならない。だからこそ、公爵家同士の婚姻は許されていないのだ。
その暗黙のルールがある限り、ハインツとの結婚はあり得ない。そんな事を、目の前の策士が知らない訳がない。だからこそエリザベスはずっと、彼の目的に確信が持てなかった。
「意外ですね。あまり驚かれていないように感じる」
「えぇ、全く驚いていないわ。だって、ハインツ様の話は荒唐無稽の作り話ですもの。公爵家同士の婚姻? 馬鹿じゃないの。それが不可能な事くらい貴族の誰もが知っているわ」
「公爵家同士の婚姻、確かに不可能ですね。今のままでは――、と注釈をつけておきましょうか」
「どう言うことよ!? それではまるで、未来では可能になると言っているようなものじゃない」
腕を組み笑みを浮かべていたハインツの態度が変わる。心底おかしいとでも言うように笑い出したハインツの様子を見て、エリザベスの頭はさらに混乱していく。
(……公爵家同士が婚約する方法を知っているなんて言わないわよね)
「くくく……、近い将来、ベイカー公爵家とシュバイン公爵家は姻戚関係を結びますよ。そのための布石は打ってきたつもりだ。ただ、一番厄介な御仁から、ある条件を出されましてね」
姻戚関係を結ぶ!? あり得ないわ……
ちょ、ちょっと待って……
結婚すると言われたことよりも黒い笑みを浮かべ、こちらへと近づいて来るハインツに恐怖を覚えエリザベスが後ずさる。スッと伸ばされたハインツの手を払い除ける事も出来ず、エリザベスはただ捕まるしかなかった。
「実はね、エリザベス。貴方と婚約するには、貴方の許可が必要なのですよ」
「えっ?」
耳元で囁かれた言葉に、エリザベスの頭が混乱していく。
(私の許可が必要って、いったいどう言う事よ?)
今後に関しては全て父に一存している。次の婚約者が誰になるのかも、はたまた利用価値無しとして修道院に入れるかも、父の心ひとつだ。そこにエリザベスの意志は関係ない。ウィリアム王子との婚約に際し散々わがままを言って来たエリザベスは、父の意向に従うつもりだ。父宛の手紙にも、その旨は書いていた。父がその事を知らない訳がない。
それなのに目の前の男は、公爵家同士の婚姻が私の一存で決まると言っているのだ。
(まさか、それすらも私を騙すための嘘なの?)
ハインツが何を考えているのか分からない。だからこそエリザベスは怖かった。