麗しの狂者たち【改稿版】
__それから、十数分後。
「亜陽君!」
コンビニの入り口付近で待っていると、こちらに向かってくる亜陽君の姿を視界に捉え、私は駆け足で彼の元へと近寄る。
「美月!」
そして、彼もまた私の元へ小走りで向かうと、落ち合ったところで突然体を抱き締められた。
傍から見れば、まるで数年ぶりに再会を果たした恋人のようなのかもしれない。
それ程、亜陽君は人目を憚ることなく私を強く抱き締めてきて、少しの恥ずかしさはあるけど、それよりも嬉しさと安堵の気持ちの方が上回った。
「大丈夫?あいつに変なことされなかった?」
それから、亜陽君は私の頭をゆっくりと撫でながら、とても優しい声で問いかける。
「うん、大丈夫。ずっとゲームセンターに居ただけだから」
それが嬉しくて、私はここぞとばかりに亜陽君の胸の中に顔を埋めた。
良かった。
いつもの優しい亜陽君だ。
ついさっきまで抱えていた不安がバカみたいに思える程の愛情を肌で感じ、ようやく訪れた安心感に顔の筋肉が緩む。
「ごめんね、美月。俺の爪が甘かったばかりに、こんなことに巻き込まれて……」
しかし、その直後。
物凄く引っ掛かるフレーズが亜陽君の口からぽろりと溢れ落ち、思わず彼を勢いよく見上げた。