麗しの狂者たち【改稿版】
「……ねえ、美月。ここでキスしていい?」
すると、暫しの間静寂な時間を満喫していると、何気なく尋ねられた亜陽君の一言によって意識が現実へと引き戻される。
「そ、それはちょっと……。もしかしたら、両親に見られるかもしれないし……」
気持ち的には是非ともしたいところではあるけど、流石に公の場でキスをする勇気は持てず、私は恥ずかしさのあまり視線を足元に落とす。
「それならそれでいいんじゃない?その方が向こうも安心するだろうし」
けど、亜陽君はそれを許さないと言わんばかりに、強制的に私の顎を引き上げてきて、真っ直ぐな視線を向けてくる。
こうなってしまっては、もやは成す術なんてない。
彼の熱に一度触れてしまえば、選択肢など与えられず、どこまでも囚われ続ける。
しかし、それは私自身も望んでいることなので、一応軽い抵抗は示すも、そこからはされるがまま彼の欲を全身で受け止めていく。
「……ん、亜陽君。大好き……」
それから、何度かキスを交わしているうちに、いつの間にやら周囲のことはすっかり頭から抜け落ちていて。
口の中で感じる彼の熱に酔いしれながら、私も無我夢中で彼に絡みつく。
つい最近までは、触れる程度の軽いキスだけで満足出来ていたのに、沢山のキスを知ってしまったが故に、今はそれだけでは全然物足りない。
もっと長く彼を感じたくて、快感を求めて、溢れ出てくる欲情のまま自ら唇を重ねていった。