麗しの狂者たち【改稿版】
中学時代は今程ではないけど、それなりにやんちゃをしていた。
けど、それを咎めるのは決まって母親だけで。
父親や兄貴達から叱られた記憶は一切なく、何かあっても、さっきみたいに余裕の表情で全てを許容されていた。
始めはそれが凄く楽で、有り難いと思っていた。
けど、あまりにも感情を表に出されないことが次第に窮屈となってきて、見えない隔たりが俺の中で出来始めた。
そして、何もかも許してくれる行為は、優しさではなく無関心なんだと。
そうはっきり分かったのは、高校に入ってからのことだった。
だから、俺はこの家を飛び出した。
社会勉強をしたいという、それなりに真っ当な理由を並べて。
そしたら、案の定。
母親以外は皆んなあっさりと賛同してくれて、今の暮らしがある。
先程美月に話した通り、実家が嫌いというわけではない。
ただ、もう少し俺にも意識を向けて欲しい。
その欲求不満から非行に走るなんて。
我ながら何とも子供じみた行動に出ているなと思うけど、その結果店長と出会い、新たな目標が出来て自分が進むべき方向性も見えてきた。
だから、何も型にはまって生きることが全てではないと。
そんな持論を見出してからは、自分の欲望に益々忠実になっていくような気がする。