麗しの狂者たち【改稿版】
「にしても、来夏がそこまで他人に興味示すの初めて見たかも」
「ですよね。マジでどんな子か見てみたいわ。女から騒がられても一切関心示さないのに。なあ、今度軽いノリで店に連れてこいよ」
しかも、直ぐ帰るのかと思いきや。
何故か椅子に座り、店長と人の色恋話で盛り上がり始めたので、俺はだんまりを決め込んだ。
まったく。
他人事だからって好き勝手に言いやがって。
そもそも、俺があいつを好きになるなんて、そんなこと絶対に認めたくない。
今まで、ただの退屈しのぎでしかないのに。
それが本気になったら、なんかダサ過ぎるだろ。
「本当に来夏君は素直じゃないよねー。あー、俺も青春してーな。てか、この際高校生でいいから誰か紹介してよ」
「別に良いですけど。通報されても知らねっすよ?」
それから、ある程度話したところで気が済んだのか。
いつの間にやら、話題は翔さんの彼女作りへと変わり、何気なく投げられた要望に俺は冷めた口調でそう返答した。