麗しの狂者たち【改稿版】
……なんだろう。
なんか、すっげーモヤつく。
店長達に弄られたせいか、余計なことまで考えるようになった気がする。
「ねえ、来夏。人の話聞いてる?今度の土曜日空いてたら遠出しない?使用人が車出してくれるって言ってくれたんだ」
「無理。その日予定あるから」
空き教室で呆然と窓の外を眺めていると、先程から隣で喋り続ける五月蝿い女に段々と苛立ちを覚えた俺は、即座に嘘の口実を言い放った。
てか、こいつ誰だ?
いきなり話しかけられたけど、これまで相手したことあったっけか?
深入りされて欲しくないから、女と交わるのは一回だけというルールを決めているせいか。
これまで数え切れない程の人間を相手にしてきたから、過去に関わった奴のことなんていちいち覚えていない。
けど、向こうはそうではないらしく。
こうして、再び関係を迫ってくる女は数知れず。
名前も顔も忘れた奴に誘われるのはよくある話だった。
「悪いけど、もうあんたと関わる気ないから。時間の無駄だし他当たれば?」
だから、はっきりとその気がないと伝えれば、大抵の女は大人しく引き下がる。
「は?何それ?もしかしてツンデレ?来夏って可愛いところあるねー」
……そのはずだけど、どうやらこいつは違うらしく。
しかも、かなり都合のいいように物事を考えるという、なかなかの面倒な女で。
俺は小さく溜息を吐き、そのまま無視することに決めた。