麗しの狂者たち【改稿版】
周りが言う通り、確かに八神君は亜陽君に負けないくらい容姿が良いのは認める。

涙袋がぷっくり膨れた切れ長の鋭い目は、不良少年の割に淀みがなく、色素の薄い澄んだ瞳がとても綺麗。

それに、前髪が掻き上げられている為、キリッとし眉が露になっているせいで余計迫力を増している。

顔も小さいし、鼻筋も通っているし、肌も私より断然綺麗だし、顔のパーツが全てにおいて完璧。

身長も亜陽君より高く、モデルみたいに足が長がくて、スタイルも申し分ない。

けど、少し長めのストレートヘアーには赤いメッシュが入っているし、両耳にはシルバーのピアスを二つぐらい付いているし、更に言えば唇にまでシルバーリングのピアスを付けているしで。

誰がどう見ても不良感満載の彼を、もし家族が見たら一体どうなることやら。

想像しただけでも身震いがするので、ここまで八神君を連れて来るのにかなり神経をすり減らした。

幸いにもまだ父親は帰ってきてないので、家に入る時は家政婦にバレないよう八神君を物陰に隠してから母親に挨拶をして。

その後は隙を見てなるべく足音を立てないように部屋まで案内した。

人生初の亜陽君以外の男の子を黙って部屋に連れ込むという、あるまじき行為に今でも緊張と罪悪感で胸がいっぱいなのに、八神君は全くもって平然としている。

「なあ、それより腹減ったんだけど。なんか食うもんないの?」

しかも、あろうことか人のベッドの上で堂々と大の字になって寝転び、挙げ句の果てにお礼も言わず食べ物まで要求してくる。

なんとも無礼極まりない人だと思うけど、今更彼に礼儀を求めてもどうしようもないので、私は諦めてリビングへ向かうことにした。
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