麗しの狂者たち【改稿版】
視界に映るのは、使われていないマットレスの上で八神君の首元に腕を絡めながらキスを強請る白浜さんの姿。
しかも、ワイシャツのボタンは全て外されていて、豊満な胸を強調する下着がちらつき、その妖艶過ぎる姿に同性でも目が離せない。
「おい、今度は何を企んでるんだよ。マジでウザいんだけど」
けど、八神君は至って平静状態で、顔を歪ませながら悪態をつく。
「そこまで分かってて、なんで付いてきたの?」
一方、厳しく追求されているにも関わらず、余裕な表情を崩さない白浜さんは笑顔で尋ねる。
「あんたらの魂胆を傍観してやろうと思って。言っとくけど、俺は何を仕掛けられても痛くも痒くもねーから」
すると、八神君は小さく溜息を吐き、今度は呆れた視線を彼女に向けた。
「……あっそ。余裕なことは何よりね。それなら、細かいこと気にしないで、ただ楽しむことに集中しない?」
そんな彼の反応に、まるで開き直った様子の白浜さんは、更に八神君の首元に絡みついてきた。
「好きにすれば」
そして、八神君もまた余裕な表情でほくそ笑むと、彼女からの濃厚なキスをあっさりと受け入れたのだ。
その瞬間拒絶反応が起き、後先考えず私は我武者羅に通路を駆け抜ける。
やっぱり、あれは罠だった。
だとしたら、亜陽君はまだ彼女と繋がっている。
……けど、今はそんなことよりも。
状況はどうあれ、八神君が白浜さんの求めにあっさりと応じたことの方が何よりも悔しくて。
今現在あの二人は行為に及んでいるのかと思うと、苦しくて、切なくて、気が狂いそうになる。