麗しの狂者たち【改稿版】
「倉科副会長、大丈夫ですか!?」
すると、突如背後から聞こえてきた大きな声に、私は肩を震わせ咄嗟に振り向くと、血相を変えた渚ちゃんがこちらに駆け寄ってくる。
そして、その後ろには慌てる彼女とは裏腹に。
無表情のままゆっくりと後を付いてくる河原木君の姿も見え、私は涙を拭いてその場から立ち上がった。
「……あ。ご、ごめんなさい。またもや見苦しい所をお見せしてしまうなんて……」
しかも、今回は河原木君まで一緒なので、余計に部が悪くなり、私は恥ずかしさのあまり視線を下へと落とす。
「本当に驚きましたよ。この変態女が急に走り出すから何かと思えば。あなたがこんなに取り乱すなんて、只事ではなさそうですね?」
「もしかして、またクズ共にやられたんですか!?何なら私が代わりに殴りましょうか!?」
渚ちゃんに事情を話して以降、どうやら彼らの評価はかなり下がったらしく。
特にあれだけ尊敬していた亜陽君に対して最近冷ややかな目で見ている彼女の暴走は止まることを知らず。
話がややこしくなる前に、私は一先ず落ち着いてもらおうと、渚ちゃんの肩に手を置いた。
「えと……なんて説明すればいいのやら……」
確かに、彼女の言うことは間違いではないけど、どちらかと言えばこの涙の意味は……。
河原木君も居るし、これまでの経緯を話すか話さまいか。
かなり迷ったけど、ここまで駆けつけてくれた二人の配慮を無駄にしてはいけない気がして。
私は小さく深呼吸をすると、打ち明ける覚悟を決め、ぽつりぽつりと先程の出来事を彼女達に話し始めた。