麗しの狂者たち【改稿版】
「ええっ!?そ、そうだったんですか!?」
それから、ようやくその意味を飲み込むと、私は今日一番の大声を出して目を思いっきり見開く。
「実は、生徒会入ってから割と直ぐに付き合い始めたんです。倉科副会長の素晴らしい所を話していたら意気投合したと言おうか」
なんと。
まさか二人の馴れ初めが私とは。
というか、河原木君がそこまで私のことを慕ってくれていたとは今の今まで全く知らなかった。
寧ろそっちの方が驚きで、私は再び開いた口が塞がらず、暫くその場で固まる。
「とりあえず話は戻しますが、あなたがここまで取り乱しているのなら、答えは明白でなのでしょう。あとはどう決着付けるかはご自身でよく考えてください。俺達が出来ることなんてたかが知れているので」
そう言うと、河原木君は無表情のまま渚ちゃんの腕を引っ張ると、踵を返してこの場から離れる。
「つまり、私達はいつだって副会長のこと応援しているので、それだけは絶対に忘れないでくださいねー!」
一方で、渚ちゃんは強制的に退散することに渋い表情をしながらも、きっちりと河原木君の気持ちを代弁している姿に、心の奥がじんわりと熱くなってきた。
羨ましい……。
亜陽君とは幼い頃からずっと一緒だったけど、果たしてあそこまで意思疎通が出来ていただろうか。
今だって時々何を考えているのか分からない時があるのに。
付き合っている期間は私達の方が圧倒的に長いけど、付き合っている密度はもしかしたら渚ちゃん達の方が上なのかもしれない。
私も、人とそんな付き合い方をしたい。
二人の姿を見て切実にそう思った私は、拳を小さく握りしめると、胸元に手をあててそっと目を閉じる。
河原木君が言うように、私の答えは明白だ。
もう誤魔化すことが出来ないくらいに。
ただ、それを受け止める勇気が私に持てるかどうか。
亜陽君に対する思いだってまだ拭いきれていないのに、この剥き出しになってしまった感情をどう扱えばいいのか。
相変わらず決断出来ない自分の意気地の無さに、ほとほと呆れるけど、ここはけじめを付けなきゃ。
そう決断すると、一先ず二人のお陰で気持ちも大分落ち着いてきたので、今日はこのまま家に帰ろうと校門へと引き返す。