麗しの狂者たち【改稿版】
それから、どれぐらい経っただろう。
校門を出て我武者羅に走り続けて、そのうち持久力が奪われてきて。
力尽きた頃にふと顔を上げてみると、いつぞやの公園の前で私は立ち止まっていた。
何このデジャブ。
まさか、ここまで状況が一致してしまうとは、これは神様の悪戯なのだろうか。
お陰で思い出したくない記憶が鮮明に浮かび上がってきて、折角止まりかけていた涙が再び大量に溢れ出してくる。
「うう、もう嫌。何もかも全部……」
八神君の本心が分からない。
それなのに、自分の気持ちははっきりと分かってしまい、悔しいやら切ないやらで心も頭もぐちゃぐちゃ状態。
こうなってしまってはもう後にも引けなくて、どうすればいいのか分からない。
その時、突然誰かに背後から抱きつかれ、驚きのあまり声なき悲鳴をあげる。
「あのさ。勝手に決めつけて、勝手に拗ねるんじゃねーよ」
けど、聞こえてきたのは変質者ではなく、少し不機嫌そうな八神君の声で、内心ほっと胸を撫で下ろすと、恐る恐る彼の方へと振り向く。
「確かに俺が悪かったけど、美月も大概にしろよ」
すると、何故か不平を漏らされ、納得がいかない私は眉間に皺を寄せた。
「誰が好きじゃないって言った?あそこまでアピールしてるのに、なんで分かんねーだよ」
そんな私の目を見据える八神君の表情はとても真剣で。
瞳の奥から感じる圧力に抑され一瞬たじろいでしまったけど、こちらも負けじと食ってかかる。
「だって八神君の気持ちはっきりと聞いた事ないし、私の糸を滅茶苦茶にしたいとしか言わない人をどう理解しろと?」
これまで抱えていた不満をここで爆発させると、私は恨めしく彼を睨みつけた。