麗しの狂者たち【改稿版】
◇◇◇




__翌朝。


朝日がカーテンの隙間から差し込み、私は意識朦朧としながら目をうっすら開けると、仄かに漂ってきた芳ばしい香りに段々と頭が覚醒してくる。

そして、重い体を起こすと、先に起きていた八神君がキッチンで朝食の準備をしている姿が視界に映り、私は少しだけ寝癖を整えてから彼の元へと向かう。


「おはよう八神君。朝ごはん作ってくれてありがとう」

「ああ、おはよう。それより、体は平気か?」


それから、私も手伝おうとしたところ、真っ先に体のことを気にかけてくれて、軽い感動を覚えた。


お互いの本心を打ち明けてから、何だか八神君とは更に距離が近くなったような気がする。


それがとても嬉しくて。

更に言えば、彼が作った特製おじやがこれまた絶品で。


これまでにないくらいの幸福感に包まれながら、私達は静かな朝の一時を過ごす。



__けど、楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもので。


ついに来てしまったチェックアウトの時間に、せっかく軽くなった心が段々と重くなり始め、私は密かに肩を落としながらコテージを後にした。
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