麗しの狂者たち【改稿版】
こうして、時たま生徒会の仕事を手伝ってくれる来夏君。
私と本格的に付き合うようになってからは、彼の生活態度が大きく変わり、規則正しく毎日登校してくれるようになった。
他にも、髪を黒色に戻したり、ピアスを止めたり、お酒タバコをやめてくれたりと。
今では不良時代の痕跡は跡形もなく消え去り、八神グループの御曹司らしい端正な身なりへと変化を遂げた。
その甲斐あって退院してから来夏君を自宅に招いた時の両親の反響はとても良く、彼の歯に衣着せぬ性格も気に入ってくれた。
今後来夏君とはどういう将来を歩むことになるのか分からないけど、ゆくゆくは結婚出来たらいいなと。
最近ではふとした時にそんなことばかり考えてしまい、自制してはいるものの、妄想はなかなか食い止めることが出来ない。
「そういえば、この前先輩が今度の土曜日バーベキュー大会やるって言ってたけど美月も来るか?」
「勿論行く!私そういうの初めてたがら凄く楽しみ」
そして、もう一つ退院して大きく変わったこと。
それは、あの鉄板焼き屋さんで短期間バイトを始めたこと。
入院中両親に思い切って相談したら、意外にも快く承諾してくれて、今では仕事にも慣れ、店長さんや翔さん達とも大分打ち解けられ、充実した日々を送っている。
そんなこんなで早くも季節は三月を迎え、来月にはいよいよ本格的な受験生となる。
あれから志望校を練り直し、いくつか候補を挙げてはいるけど、どれも偏差値が高いので、これまで通り勉強を頑張っていくしかない。
出来れば私も来夏君と同じ大学に行ければなんて一時は考えたけど、人に左右されるようなことはもうやめた。
私は私の道を。来夏君は来夏君の道を。
それぞれが求める場所へと向かい、その先でいずれは交じり合えばいいなと。
そんな夢を密かに抱きながら、これからの未来に想いを馳せている。