麗しの狂者たち【改稿版】
__そして、迎えた社交パーティー本番。
本日は休校日のため日中は閑散としていたけど、日が暮れるにつれ生徒達が登校し始め、会場内は既に人で溢れかえっている。
パーティーの参加は任意なので、一体どれぐらいの人が集まるかは未知数だった。
けど、広報した途端かなりの反響があり、予想以上の参加数に生徒会だけでは抱えきれなくなり、来夏君を始め他の生徒にも応援を要請することに。
その結果、亜陽君を中心に立派なパーティー会場が出来上がり、満員状態を見ると、大きな達成感と感慨深い気持ちでいっぱいになる。
「ああ。倉科副会長のドレス姿はなんて可憐なのでしょう。恐らくこの会場内で副会長の美しさに敵う者なんていません。どんな色合いで来るのか一ヶ月前から考えていましたが、ワインレッドのマーメイドだなんて。予想を遥かに超えてもう感無量です。写真撮っていいですか?というか、動画撮っていいですか?」
「だから、やめろって言ってるだろストーカー女。通報されたいのか?」
それから、私達も正装して会場で落ち合うと、早々に渚ちゃんの類い稀ない肺活量を駆使した猛アピールが始まり、その隣では淡々とした表情で辛辣なツッコミを入れる河原木君。
それでも、なんだかんだ言ってこの二人の仲の良さは十分伝わってくるので、私は微笑ましく思いながら、黙って二人のやり取りを見守っていた。
「そういえば、八神先輩は一緒じゃないんですね?てっきり二人で来るのかと思ってました」
「……あ、うん。来夏君は用があって一旦帰ったの。パーティーには遅れて参加するみたいだけど」
すると、不意に話題の矛先がこちらに向けられ、何気なく聞かれた河原木君の質問に、私は苦笑いで答えた。
本当は当初その予定だったけど、昨日急遽そう言われてしまい、若干意気消沈している。
「けど、愛の力って本当に凄いですね。あの天才不良問題児がただの天才優良児に変わりましたから。これで生徒会もようやく安泰ですね」
そうしみじみと語る渚ちゃんの話に何も言えない私。
確かに、彼が大人しくなってくれたお陰で地域住民の苦情が減り、保護者の苦情も減ったので悩みの種がなくなったのはとても有難い。
けど、それによって更に八神ファンが増え、益々私に対する女子達の当たりが強くなってきているので、何だかとても複雑な心境になる。