麗しの狂者たち【改稿版】


「八神君、何度言ったら分かるんですか!?しかも、こんな人目がつく所で堂々と!あまりにも度が過ぎると、それ相応の処置をとらせてもらいますよ!」

とりあえず、当初の目的を達成しようと。
思考を切り替えてから、ぐさぐさと突き刺さってくる女子生徒の視線を無視して、私は彼を怒鳴りつけた。

「あんたも懲りねーな。毎度それ言って心折れないのか?」

しかし、八神君には相変わらず一ミリも響いていないようで。
あっけらかんとしている様子に苛立ちが募り始めた私は、今度は違うやり方で説得を試みることにした。

「いいですか、八神君。未成年の喫煙は法律で禁止されているのはさることながら、がんや心臓病のリスクが高まるのは勿論。脳の成長を妨げたり、怒りっぽくなったり、自己中心的になったり……。あ、でも、これは喫煙とあまり関係なさそうですね」

「おい。どさくさに紛れて喧嘩売ってんの?」


「ねえ、ちょっと。あたしの存在忘れてない!?」


すると、八神君との会話に集中していたところ。
置いてけぼり状態となっていた女子生徒は、痺れを切らして私達の間に割って入ってきた。


「あ…………………。そんなことないです」

「いや。あんた取り繕うの下手過ぎん?」

嘘が苦手なりに誤魔化そうとしたけど、それを一瞬で見破られてしまい、何やら八神君に続いてまたもや厳しい指摘をされてしまう。

「もういいわ。なんかする気失せたし、あたし帰る。じゃあ来夏、また今度しよーね」

すると、女子生徒は深い溜息を一つ吐いてから、肌けた制服を正すと、私には構わずさっさとこの場を去って行ってしまった。

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