麗しの狂者たち【改稿版】

EP6.尊敬する人~来夏side~



「……そういうことだから、今度の土曜の食事会には絶対に顔を出すのよ。それと、あなたこの前学校から……」


ブチ。


受話器越しから聞こえてくる母親の声が段々と鬱陶しくなり、ここから先は聞く必要がないと判断した俺は、強制的に通話を終了させた。


その直後、怒りをぶつけるようにメッセージの着信音がけたたましく鳴り響き、そのまま画面を見ずにスマホをポケットに突っ込む。

今はこうして無視出来るけど、土曜日には集中攻撃されるので、結局逃れることは出来ない。

これが火に油を注いでいる行為なのは良くわかるけど、今はこの自由な時間を誰にも邪魔されたくなくて、俺は誰もいない資料室のソファーに寝そべった。



平日の昼下がり。

あと十分ちょっとしたら授業が始まる。

今日は一日授業に出ないと単位がヤバいから、どんなに退屈でもこの檻から抜け出せない。


「……あー。もうマジでめんどくせぇー」


毎回毎回、教科書を読んでいるだけの授業に一体なんの意味があるのやら。

自分であれこれ調べながら勉強した方が、よっぽど深く知識を得られるのに、なんでもこうも世の中は決まった形に拘るのだろうか。


特にこの学校はその特色が強い。

一流企業やら政治家やら医者やら、上流階級の人間がこぞって集まるこの場所には、しがらみに囚われている奴等しかいない。

将来が決められているせいか、個性がある人間なんて類を見ないし、俺みたいな奴は突出して目立つ。


だから、つまらない。

ここにいると、毎日毎日息が詰まる。

外の世界の方がよっぽど刺激的で、無秩序で開放感が堪らなくて、出来る事ならこんな学校今すぐにでも辞めてやりたい。
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