麗しの狂者たち【改稿版】
高校入って直ぐにここで働き始めたから、店長とはかれこれ二年半くらいの付き合いになるだろうか。
高校生から一人暮らしを始めているので、面接の時にあれこれ聞かれるかと思いきや。
特に詳細な質問はなく、志望理由だけ答えたら何故か即採用となった。
その理由も、”自宅に近い”としか言わなかったから、おそらくその時はよっぽど人手が欲しかったんだと思う。
バイト先で選んだのは鉄板焼き屋で、後から聞いた話によると、最近開業したばかりの店らしく、従業員は店長と俺と、大学生が二人。
だから、シフトは容赦なく組まれ、一週間の殆どがバイトで潰れる。
店長は元半グレだったらしく、学生時代は俺よりも荒れてたみたいで、それがある事をきっかけに、一念発起して開業したんだとか。
年齢はまだ二十代後半なのに、ほぼ一人の力でここまで来たというから驚きだ。
この二年半、そんな店長から色々教わった。
酒、タバコ、喧嘩、女遊び。
それから、経営と社会に関することと、固定概念に囚われない己の生き方。
それら全てが新鮮で、刺激的で。
そこで初めて、人を尊敬する気持ちが生まれた。
俺にとって学校よりもここにいる方が断然居心地が良くて意味を成す。
だから、卒業出来る必要最低限の授業に出れば、好きな時間帯にいくらでもシフトを入れていいという話になり。
それは俺にとっても、店長にとっても好都合なので、言われた通りそこは上手く調整している。