麗しの狂者たち【改稿版】
「な、なんだか落ち着かないね。知り合いの人いなきゃいいけど……」
なんとか席に着いたはいいものの。
店内はとても静かな雰囲気でゆったり出来るのに、周囲の視線が気になり過ぎて、デートに全く集中出来ない。
「そう?別に見せつけてやればいいんじゃない?」
一方、亜陽君は全く気にしないどころか、何だかこの状況を楽しんでいるようにも見えて。その心の強さに感心してしまう。
とりあえず、テーブルに備え付けられていたメニュー表を広げてみると、見開き一杯にドリンクの種類がびっしり書かれていて、評判通り充実していた。
メインであるお抹茶の他に、ハーブティーやコーヒーなど。
それ以外の種類も豊富で、どれにするか迷ったけど、初見なので、ここは基本のお抹茶からいこうと決めた。
こうして、私と亜陽君は温かいお抹茶。
それと生菓子と羊羹を追加して、飲み物が来るまでの間、暫く二人の時間を満喫した。
「なんか、亜陽君と放課後デートするの久しぶりだね」
「そうだね。社交パーティープロジェクトが立ち上がってからは、なかなか時間が取れなくなっちゃったしね」
少し寂しげな笑顔で、そう答える亜陽君。
確かに、年間の学校行事を増やすという一大企画なだけに、これから打ち合わせやら準備やら、やらなければいけないことは山程あって。
それが終われば今度は受験シーズンに入るので、こうして亜陽君とのんびりとした時間を過ごせるのも、あと残り僅かなのかもしれない。
そう思うと、この時間がとても貴重な気がして、私は更に彼との距離を詰めようと、椅子を少しだけ横にずらす。