麗しの狂者たち【改稿版】
「その生菓子美味しい?」
「うん。甘さ控えめで、お抹茶にも合ってて凄く美味しいよ」
「それじゃあ、俺にも一口頂戴」
それから、お茶とスイーツを堪能していると、小さく口を開けて甘いおねだりをしてくる亜陽君。
私は戸惑いながらも無言で頷くと、牡丹の花の形をした生菓子を竹楊枝で一口台に切り、恐る恐る亜陽君の口へと運ぶ。
「……ん。美味しい」
それを嬉しそうに食べると、亜陽君は手を付けていない方の羊羹の端っこを竹楊枝で切り、今度は私の口の前へと差し出す。
「はい、美月もどうぞ」
「……あ、うん。頂きます」
私は照れながらも、亜陽君に食べさせてもらえる喜びを噛み締めながら、ぱくりと羊羹を口に含めた。
……ああ、何だか凄く恋人らしい空気。
亜陽君は私達の仲を見せつければいいと言っていたけど、今ならその気持ちが少し分かる気がする。
こうして、彼の揺るがない愛情が注がれているのを、周囲に示すことで感じる高揚感。
卑しい自分の一面を垣間見るのはあまりいい気分ではないけど、それ以上に満たされていく、この気持ち。
だから、いくら視線を感じたとしても、亜陽君と二人の世界に入っていれば私は全然平気……
……………………じゃないっ!!