麗しの狂者たち【改稿版】
さっきから脇で白浜さんの視線が痛い程突き刺さってくる。
なんだろう。
さりげなく見られているとかじゃなくて。
まるで親の仇のように、容赦なくずっと凝視されているせいで、全く亜陽君との時間に集中出来ない。
ていうか、八神君と白浜さんの関係は何なの?
付き合っているの?
その割には八神君はここに座ってから、ずっとスマホばっか見てて何も会話しないし。
白浜さんも放置されていることを気にしている様子はないし……。
分からない!
始めから今に至るまで、この人達の考えていることが全く分からないっ!!
「美月、大丈夫?なんか意識飛んでない?」
すると、なかなか反応を見せない私の顔を心配そうに覗き込んできた亜陽君と視線が合い、はたと我にかえる。
「あ、ごめんね。ちょっと考えごとしてて」
それから、私は苦笑いを浮かべて何とかこの場を誤魔化した。
兎にも角にも、白浜さんが居てはせっかくのデートが台無しだ。
特に何も言ってはこないけど、視線で攻撃してくるから、思うように亜陽君と仲睦まじくすることが出来ない。
それよりも、私がこれだけ感じているのだから、亜陽君だって気付いているのではないだろうか。
けど、それを全く表に出してこないから、彼の心境も全く読めない。
「……あ、あの。私ちょっとお手洗いに……」
とりあえず、少しでもいいから粘着的な白浜さんの視線から逃れたくて、私は思わず席を立った。