麗しの狂者たち【改稿版】
「八神君って、女の子の扱いが雑だよね。屋上でのこともそうだし」
別に、彼が女の子に対してどう接しようと私には関係ない。
それが良いか悪いかなんて、そんなことはどうでもいい。
ただ、これだけはしっかりと伝えたい。
「お願いだから、これ以上私で遊ぶのも止めてください。私はあなたの玩具じゃありません」
何故標的にされたのか知らないけど、彼の掌で踊らされている状況だけは断固拒否したい。
だから、強い意志を込めて、私は目で訴えるように八神君の瞳を力強く見据えた。
それから、暫く見つめ合う私達。
彼に私の想いが伝わっているのか、いないのか。
無表情なので手応えの程が全然分からない。
けど、ここで目を逸らしたら負けな気がして、私は彼の反応するまでは、その場で耐えることにした。
すると、不意に八神君は口元を緩ませ、私の右手にそっと片手を乗せてきた。
「な、なんですか急に?」
この話の流れで何故手を握られるのか。
彼の行動に混乱し、体温が一気に上昇していくのを感じながら思いっきり動揺してしまう。
一方で、その様子を楽しむように、八神君は余裕の笑みを浮かべながら今度は私の手を引いて、自分の口元に寄せてきた。
「あんたがそんな反応するからだろ?」
そして、まるで獲物をとらえた鷹の如く。
綺麗で大きな瞳の奥から感じる唯ならぬ圧に抑えられ、何故か目を逸らすことが出来ない。
「そうやって隙だらけだから、つけ上がられるんだよ」
そんな私の心境は全てお見通しなのか。
痛いところを突かれてしまい、私は思わず顔を顰めてしまう。
「ガード固そうに見えて呆気なく身を許すし。純粋な割には意外とエロいし。しがらみに従順なくせして俺に懐柔されているしで。本当に見てて飽きないな」
しかも、明らかな侮辱発言の連発に怒りのボルテージが高まるも、全て事実なので反論する言葉が出てこない。
それが余計に悔しくて、私はただ八神君を睨みつけることしか出来なかった。