呪われ王子の甘い愛情
第二話
○ココロ自室(朝)
ココロ(昨日のアレは、なんだったんだろう……)
やつれた感じで、朝日を浴びながらベッドの上に上体を起こしているココロ。
花柄のカーテンがかかっていたり、女の子らしい部屋。
ココロが壁にかけてある制服を見るが、制服に血の跡はなく綺麗。
ココロ(確かに、血がついてたと思ったのに)
足元に血が滴る様を思い出すココロ。
ココロ(傷もなんともなかったし)
虫垂炎の手術跡をパジャマの上から撫でるココロ。
ココロ「やっぱり、夢だったのかなぁ」
独り言を言って、キスシーンも思い出して真っ赤になる。
ココロ「考えても仕方がない! 学校、行くぞー!」
赤くなった頬を叩いて気合いを入れ、拳を振り上げるココロ。
○女子トイレ(朝)
遥香が鏡を見ながら髪をといており、ココロは石鹸で手を洗っている。
遥香「昨日? 私、部活入ったから先帰っててねって言ったじゃん。待ってたの?」
ココロ「ううん、そういうわけじゃないんだけど……いつの間にか寝ちゃってたみたいで……」
しどろもどろに話すココロ。
ココロ「昨日って雷鳴ってた?」
遥香「えー、私は気づかなかったなぁ」
ココロ(やっぱり、夢……なのかなぁ)
釈然としない様子で手の泡を水で流すココロ。
ジャブジャブと洗っていると、突然蛇口から流れる水が真っ赤に染まる。
ココロ「っ!」
驚いて飛び退くココロ。
ココロが自分の手を見ると、血のような液体で濡れていた。
遥香「どした? 虫?」
ココロ「え?」
ちらりとココロを見た遥香は平然としている。
血には気がついていない様子で、ココロは驚いて遥香を見る。
でももう遥香はもう鏡に向き直っていた。
ココロが蛇口に視線を戻すと、蛇口から流れる水は透明に戻っていた。
真っ赤に染まっていたはずのココロの手も、ただの水で濡れているだけ。
不思議そうに自分の手を見るココロ。
遥香の「不興を買うと呪われる」という言葉と、柊の「これで、オマエも呪われた」という言葉を思い出し青ざめるココロ。
ココロ「ううん……まさかね」
笑って不安を吹き飛ばそうとするココロ。
○廊下(朝)
ココロと遥香がトイレを出ると、廊下の奥に人だかりが出来ている。
何事かと近づく二人。
生徒たち「王子カッコいい〜」
「生徒会長にケンカ売るなんて命知らずだな」
「誰?」
「廃部になったソフトボール部の元部長」
「呪いってマジかな」
ざわつく生徒たちの中心で、柊と体格の良い元ソフトボール部部長が向かい合っている。
柊「言いたいことはそれだけか?」
冷徹な柊とは対照的に、元部長は興奮した様子だ。
元部長「うちの部に入るつもりだった新入生もいるんだ! 部員募集すれば」
柊「その話は何度も聞いた」
冷たく元部長の言葉を遮る柊。
柊「馬鹿の一つ覚えだな。もっと別の切り口は考えないのか?」
見下す眼差しの柊。
柊「こんな戦術も考えられないようなのが、部長だったとはな。やはり廃部にして正解だ」
元部長「このっ……!」
口では敵わないとつかみ掛かろうとする元部長。
それを僅かな動きでかわし、元部長の腕をつかみ捻りあげると元部長は床を転がった。
華麗な動きに、観衆から歓声が上がる。
柊「無様だな」
仰向けに寝転がる元部長を見下ろす、美しくも冷徹な柊。
踵を返してその場を離れようとした柊は、人混みのなかにココロがいることに気がつく。
遥香を含む観衆は色めき立ち柊に注目しているが、ココロだけは青ざめて柊ではなく何故か天井の方を見ている。
ツカツカとココロに近づく柊。
柊の動きに合わせて、観衆の注目がココロに移る。
怯えた表情で天井から柊に視線を移すココロ。
柊はココロの肩に手を置き、周囲には聞こえないように、耳元でささやく。
柊「なにが、見えている?」
ビクリと肩を跳ねさせるココロ。
ココロには、天井からポタリポタリと柊の肩に向かって血が滴り落ちているのが見えていた。
ざわめく観衆は、誰もそのことに気がついてない。
柊「放課後、生徒会室に来い」
柊は姿勢を正して周囲にも聞こえるように告げると、そのままココロの返事も聞かずに立ち去っていく。
その後ろを、泣きぼくろのある袖笠公景が着いて行く。
ココロの前を通る時に目が合い、公景はにこりと笑う。
生徒たち「え、ヤバっ」
「あの一年、なにしたの?」
ひそひそと話す観衆たち。
元部長は廊下に転がったままくやしそうにしている。
遥香「ココロ、なに言われたの?」
ココロは立ち去る柊と公景の後ろ姿を見つめている。
二人が通った後には、点々とと血痕が続いているのがココロには見えていた。
ココロ「ねえ、遥香……私の肩になにかついてる?」
柊たちを見つめたまま、遥香に聞くココロ。
遥香は首を傾げる。
遥香「え? なにもついてないよ」
遥香はそう言うが、柊がさわったココロの肩にはべっとりと血の手形がついていた。
○生徒会室(放課後)
緊張した面持ちで生徒会室の扉を開けるココロ。
生徒会長席に柊が座っており、メガネをかけて書類仕事をしている。
柊「来たか」
柊はココロに気がつくとメガネを外して立ち上がる。
柊「まあ、座れ」
柊は来客ソファーをココロに示し、ココロは大人しくそこに座る。
テーブルに置かれたティーコージーのポットからお茶を入れてココロに出す柊。
柊「飲め」
向かい側にもソファーがあるが、そちらではなくココロの隣に腰を下ろし、自分も紅茶を口にする柊。
膝の上で拳を握りしめて固まっていたココロがティーカップに手を伸ばす。
すると、どこからともなく血が一滴落ちてきてカップの中に落ちた。
慌てて手を引っ込めるココロ。
柊「やはりオマエ――見えてるな」
満足そうに微笑を浮かべる柊。
怯えた目で柊を見るココロ。
ココロ「これが……呪いですか? 望葉先輩……私になにをしたんですか?」
ココロの問いに黙ったまま、妖しく微笑む柊。
無言で手を伸ばしてくる柊から逃げようと背を向けるが、髪をつかまれそのままソファーに押し倒されるココロ。
衝撃で、ココロが飲むはずだったティーカップが倒れる。
ソファーにうつ伏せになるココロに覆い被さり、震えるココロの髪を愛しそうに撫でる柊。
柊「もう離しはしない。オマエはオレの物だ」
ココロの耳元で囁き、そのまま耳を甘噛みする柊。
倒れたティーカップからテーブルに広がった液体は、紅茶ではなく真っ赤な血だった。
ココロ(昨日のアレは、なんだったんだろう……)
やつれた感じで、朝日を浴びながらベッドの上に上体を起こしているココロ。
花柄のカーテンがかかっていたり、女の子らしい部屋。
ココロが壁にかけてある制服を見るが、制服に血の跡はなく綺麗。
ココロ(確かに、血がついてたと思ったのに)
足元に血が滴る様を思い出すココロ。
ココロ(傷もなんともなかったし)
虫垂炎の手術跡をパジャマの上から撫でるココロ。
ココロ「やっぱり、夢だったのかなぁ」
独り言を言って、キスシーンも思い出して真っ赤になる。
ココロ「考えても仕方がない! 学校、行くぞー!」
赤くなった頬を叩いて気合いを入れ、拳を振り上げるココロ。
○女子トイレ(朝)
遥香が鏡を見ながら髪をといており、ココロは石鹸で手を洗っている。
遥香「昨日? 私、部活入ったから先帰っててねって言ったじゃん。待ってたの?」
ココロ「ううん、そういうわけじゃないんだけど……いつの間にか寝ちゃってたみたいで……」
しどろもどろに話すココロ。
ココロ「昨日って雷鳴ってた?」
遥香「えー、私は気づかなかったなぁ」
ココロ(やっぱり、夢……なのかなぁ)
釈然としない様子で手の泡を水で流すココロ。
ジャブジャブと洗っていると、突然蛇口から流れる水が真っ赤に染まる。
ココロ「っ!」
驚いて飛び退くココロ。
ココロが自分の手を見ると、血のような液体で濡れていた。
遥香「どした? 虫?」
ココロ「え?」
ちらりとココロを見た遥香は平然としている。
血には気がついていない様子で、ココロは驚いて遥香を見る。
でももう遥香はもう鏡に向き直っていた。
ココロが蛇口に視線を戻すと、蛇口から流れる水は透明に戻っていた。
真っ赤に染まっていたはずのココロの手も、ただの水で濡れているだけ。
不思議そうに自分の手を見るココロ。
遥香の「不興を買うと呪われる」という言葉と、柊の「これで、オマエも呪われた」という言葉を思い出し青ざめるココロ。
ココロ「ううん……まさかね」
笑って不安を吹き飛ばそうとするココロ。
○廊下(朝)
ココロと遥香がトイレを出ると、廊下の奥に人だかりが出来ている。
何事かと近づく二人。
生徒たち「王子カッコいい〜」
「生徒会長にケンカ売るなんて命知らずだな」
「誰?」
「廃部になったソフトボール部の元部長」
「呪いってマジかな」
ざわつく生徒たちの中心で、柊と体格の良い元ソフトボール部部長が向かい合っている。
柊「言いたいことはそれだけか?」
冷徹な柊とは対照的に、元部長は興奮した様子だ。
元部長「うちの部に入るつもりだった新入生もいるんだ! 部員募集すれば」
柊「その話は何度も聞いた」
冷たく元部長の言葉を遮る柊。
柊「馬鹿の一つ覚えだな。もっと別の切り口は考えないのか?」
見下す眼差しの柊。
柊「こんな戦術も考えられないようなのが、部長だったとはな。やはり廃部にして正解だ」
元部長「このっ……!」
口では敵わないとつかみ掛かろうとする元部長。
それを僅かな動きでかわし、元部長の腕をつかみ捻りあげると元部長は床を転がった。
華麗な動きに、観衆から歓声が上がる。
柊「無様だな」
仰向けに寝転がる元部長を見下ろす、美しくも冷徹な柊。
踵を返してその場を離れようとした柊は、人混みのなかにココロがいることに気がつく。
遥香を含む観衆は色めき立ち柊に注目しているが、ココロだけは青ざめて柊ではなく何故か天井の方を見ている。
ツカツカとココロに近づく柊。
柊の動きに合わせて、観衆の注目がココロに移る。
怯えた表情で天井から柊に視線を移すココロ。
柊はココロの肩に手を置き、周囲には聞こえないように、耳元でささやく。
柊「なにが、見えている?」
ビクリと肩を跳ねさせるココロ。
ココロには、天井からポタリポタリと柊の肩に向かって血が滴り落ちているのが見えていた。
ざわめく観衆は、誰もそのことに気がついてない。
柊「放課後、生徒会室に来い」
柊は姿勢を正して周囲にも聞こえるように告げると、そのままココロの返事も聞かずに立ち去っていく。
その後ろを、泣きぼくろのある袖笠公景が着いて行く。
ココロの前を通る時に目が合い、公景はにこりと笑う。
生徒たち「え、ヤバっ」
「あの一年、なにしたの?」
ひそひそと話す観衆たち。
元部長は廊下に転がったままくやしそうにしている。
遥香「ココロ、なに言われたの?」
ココロは立ち去る柊と公景の後ろ姿を見つめている。
二人が通った後には、点々とと血痕が続いているのがココロには見えていた。
ココロ「ねえ、遥香……私の肩になにかついてる?」
柊たちを見つめたまま、遥香に聞くココロ。
遥香は首を傾げる。
遥香「え? なにもついてないよ」
遥香はそう言うが、柊がさわったココロの肩にはべっとりと血の手形がついていた。
○生徒会室(放課後)
緊張した面持ちで生徒会室の扉を開けるココロ。
生徒会長席に柊が座っており、メガネをかけて書類仕事をしている。
柊「来たか」
柊はココロに気がつくとメガネを外して立ち上がる。
柊「まあ、座れ」
柊は来客ソファーをココロに示し、ココロは大人しくそこに座る。
テーブルに置かれたティーコージーのポットからお茶を入れてココロに出す柊。
柊「飲め」
向かい側にもソファーがあるが、そちらではなくココロの隣に腰を下ろし、自分も紅茶を口にする柊。
膝の上で拳を握りしめて固まっていたココロがティーカップに手を伸ばす。
すると、どこからともなく血が一滴落ちてきてカップの中に落ちた。
慌てて手を引っ込めるココロ。
柊「やはりオマエ――見えてるな」
満足そうに微笑を浮かべる柊。
怯えた目で柊を見るココロ。
ココロ「これが……呪いですか? 望葉先輩……私になにをしたんですか?」
ココロの問いに黙ったまま、妖しく微笑む柊。
無言で手を伸ばしてくる柊から逃げようと背を向けるが、髪をつかまれそのままソファーに押し倒されるココロ。
衝撃で、ココロが飲むはずだったティーカップが倒れる。
ソファーにうつ伏せになるココロに覆い被さり、震えるココロの髪を愛しそうに撫でる柊。
柊「もう離しはしない。オマエはオレの物だ」
ココロの耳元で囁き、そのまま耳を甘噛みする柊。
倒れたティーカップからテーブルに広がった液体は、紅茶ではなく真っ赤な血だった。