呪われ王子の甘い愛情
第四話
○モノローグ
目を閉じて考え込んでいるココロ。
ココロ(『愛』されたから――)
教室のキス、生徒会室で押し倒されたこと、愛してると言われた車内、校門でのキスなどのイメージ。
ココロ(『呪』われた――)
血で染まった制服、肩についた血の手型、血を溢すティーカップ、握りしめられた手から滴る血のイメージ。
ココロ(そもそも、なんで私に愛!?)
目を開けて、真っ赤になって混乱するココロ。
○教室(昼休み)
遥香「ねえ、ココロ……王子と付き合ってるって本当!?」
机を寄せてお弁当を食べているココロと遥香。
二人ともお弁当はほとんど食べ終わっている。
ひそひそと聞いてくる遥香に、ココロはビックリした顔で返事をする。
ココロ「やっぱコレってそういうことになるの!?」
小首を傾げる遥香。
遥香「違うの? 校門でキスしてたって聞いたけど……」
真っ赤になって俯き、小さく頷くココロ。
遥香「……!!」
同じく赤くなり口元を抑える遥香。
ココロ「たぶん、告白……は、された。ちゃんと返事はしてないけど」
遥香「返事もらう前にキス! なにそれ、さすが王子!!」
興奮しきった様子の遥香。
遥香「でも、断る理由なんてないもんね。あの望葉柊先輩だもん!」
両手を握り合わせて顔の横に持ち、キラキラした表情の遥香。
ココロ「うーん……」
言い淀みながら、卵焼きを口に運ぶココロ。
二人の会話に聞き耳を立てていたクラスメイトたちがひそひそ話している。
クラスメイトたち「あの噂本当だったんだ」
「なんであんな女が?」
「外部生だろ」
「しっ。望葉先輩に知られたら呪われるかもよ」
遥香は普通に接していたが、他のクラスメイトたちは遠巻きにしている様子。
ココロ(グッバイ、私の楽しいキャンパスライフ……)
箸を置いて食べ終わったお弁当を包みながら、冗談めかしながらも溜め息をつくココロ。
遥香はまだ食べている。
教室の扉が開く。
柊「柳木ココロはいるか?」
顔を出したのは、柊だった。
教室に現れた柊にざわめく教室。
遥香「はいっ、はい! ここにいまーす!」
手を上げて楽しんでいるような遥香。
それを受けて、真っ直ぐに向かってくる柊。
柊「来い」
柊はそれだけ言うとココロの腕を掴んで立ち上がらせると、ココロの腕を掴んだまま黙って教室を出て行こうとする。
困惑するココロが遥香に助けを求める眼差しをするが、遥香はニコニコ手を振っているだけだった。
遥香「お弁当は私が片付けておくから、安心して行ってらっしゃーい」
ココロ(助けてよ〜)
柊に連れて行かれるココロ。
○廊下(昼休み)
ツカツカと廊下を歩く柊。
柊に引っ張られているココロ。
ココロ「ひっ……」
ココロの喉から小さく悲鳴が漏れる。
柊が掴んだココロの腕から幻の血が流れていた。
柊「怖いか?」
前を見たまま言う柊。
ココロは二人が歩いた後に落ちる血の跡を振り返りながら、柊に視線を戻すと睨みつけるように言う。
ココロ「当たり前です!」
柊「血が見えるだけだ。害はない」
ココロ(そう言われたって……)
滴り落ちる血の量は増えている。
落ちた血をココロの足が踏み、血が跳ねる。
それを見るココロの顔は青ざめている。
ココロ「望葉先輩!」
ココロの呼びかけに立ち止まり振り返る柊。
柊は無表情だが、怒っているようにも見える。
柊「柊と呼べといったはずだ」
顔を近づけ命令する柊の迫力に押されるココロ。
ココロ「柊……せんぱい」
小さくつぶやくココロに満足そうに微笑む柊。
美しい柊の微笑に、頬を染めるココロ。
それを見てさらに満足した様子で、再び歩き始める。
手を引かれるがまま、ココロも歩く。
ココロ「私は……柊先輩のなんなんですか?」
柊「愛しい人だ」
振り返りもせず平然と言う柊に頬を染めるココロ。
ココロ「なんで、私なんか」
柊「オレにとっては、なんかじゃない」
ココロの言葉を遮る柊。
ココロ「どうして……」
ココロ(職員室で会って少し話しただけだよね? 一目惚れなんてされる見た目じゃないし)
困惑するココロ。
柊「理由を知る必要はない。ただ、受け入れろ。オマエはオレの愛しい人で将来の花嫁で――」
生徒会室と書かれた扉の前で立ち止まる柊。
扉をガラッと開ける。
柊「一年F組の柳木ココロだ。生徒会長の任命権において、今日からコイツをオレの秘書する。朝昼放課後、活動させるのでそのように」
ココロを抱き寄せ、自分の前に立たせる。
生徒会室内の視線が集まる。
島になった机に四人の男女が座っており、そのうち一番入り口に近い席にいるのが公景。
目を丸くして柊を見上げるココロ。
生徒会メンバー「承知しました」
公景以外の集まった視線はすぐに各々、手元の書類やノートパソコンに戻っていく。
公景「生徒会長の秘書って、そんな役あったかぁ?」
面白そうにする公景をひと睨みして、柊はココロの手を引いて、島になった机の奥にあるテーブルに向かう。
ココロ「ひ、秘書って……私、なにすれば」
テーブルに座りパソコンを開く柊の隣に立ち、冷や汗をかくココロ。
柊「オレが快く仕事が出来るようにサポートしろ」
ココロ「具体的には……」
柊「オレの仕事が終わるまで侍ってろ」
ココロ「はべっ……?」
頭にクエスチョンマークを浮かべるココロ。
柊「こういうことだ」
椅子に腰掛けたままココロの腕を引く柊。
低い位置から手を引かれてバランスを崩したココロを、柊はそのまま抱き寄せ膝に乗せてしまう。
いったいなにが起きたかわからないといった顔のココロを尻目に、何事もなかったかのように、ココロを膝に乗せたままパソコンに向かい生徒会の仕事をし始める柊。
ポカンとした顔のココロが柊の顔を見て、生徒会室のメンバーにも目をやる。
公景を除いた生徒会の役員たち全員が手を止めてぽかんとした顔で柊とココロを見ている。
しかし、柊がパソコンの画面から顔を上げると、なにも見てませんといった様子で顔を伏せて仕事を再開する。
公景「公私混同も甚だしいな!」
柊に睨まれても、公景だけは気にせず笑っている。
再び柊の顔を見るココロ。
膝に乗っていることで柊の顔が近くにあり、至近距離で目が合い赤くなりパニくるココロ。
ココロ(コレって絶対、秘書じゃない!)
目を閉じて考え込んでいるココロ。
ココロ(『愛』されたから――)
教室のキス、生徒会室で押し倒されたこと、愛してると言われた車内、校門でのキスなどのイメージ。
ココロ(『呪』われた――)
血で染まった制服、肩についた血の手型、血を溢すティーカップ、握りしめられた手から滴る血のイメージ。
ココロ(そもそも、なんで私に愛!?)
目を開けて、真っ赤になって混乱するココロ。
○教室(昼休み)
遥香「ねえ、ココロ……王子と付き合ってるって本当!?」
机を寄せてお弁当を食べているココロと遥香。
二人ともお弁当はほとんど食べ終わっている。
ひそひそと聞いてくる遥香に、ココロはビックリした顔で返事をする。
ココロ「やっぱコレってそういうことになるの!?」
小首を傾げる遥香。
遥香「違うの? 校門でキスしてたって聞いたけど……」
真っ赤になって俯き、小さく頷くココロ。
遥香「……!!」
同じく赤くなり口元を抑える遥香。
ココロ「たぶん、告白……は、された。ちゃんと返事はしてないけど」
遥香「返事もらう前にキス! なにそれ、さすが王子!!」
興奮しきった様子の遥香。
遥香「でも、断る理由なんてないもんね。あの望葉柊先輩だもん!」
両手を握り合わせて顔の横に持ち、キラキラした表情の遥香。
ココロ「うーん……」
言い淀みながら、卵焼きを口に運ぶココロ。
二人の会話に聞き耳を立てていたクラスメイトたちがひそひそ話している。
クラスメイトたち「あの噂本当だったんだ」
「なんであんな女が?」
「外部生だろ」
「しっ。望葉先輩に知られたら呪われるかもよ」
遥香は普通に接していたが、他のクラスメイトたちは遠巻きにしている様子。
ココロ(グッバイ、私の楽しいキャンパスライフ……)
箸を置いて食べ終わったお弁当を包みながら、冗談めかしながらも溜め息をつくココロ。
遥香はまだ食べている。
教室の扉が開く。
柊「柳木ココロはいるか?」
顔を出したのは、柊だった。
教室に現れた柊にざわめく教室。
遥香「はいっ、はい! ここにいまーす!」
手を上げて楽しんでいるような遥香。
それを受けて、真っ直ぐに向かってくる柊。
柊「来い」
柊はそれだけ言うとココロの腕を掴んで立ち上がらせると、ココロの腕を掴んだまま黙って教室を出て行こうとする。
困惑するココロが遥香に助けを求める眼差しをするが、遥香はニコニコ手を振っているだけだった。
遥香「お弁当は私が片付けておくから、安心して行ってらっしゃーい」
ココロ(助けてよ〜)
柊に連れて行かれるココロ。
○廊下(昼休み)
ツカツカと廊下を歩く柊。
柊に引っ張られているココロ。
ココロ「ひっ……」
ココロの喉から小さく悲鳴が漏れる。
柊が掴んだココロの腕から幻の血が流れていた。
柊「怖いか?」
前を見たまま言う柊。
ココロは二人が歩いた後に落ちる血の跡を振り返りながら、柊に視線を戻すと睨みつけるように言う。
ココロ「当たり前です!」
柊「血が見えるだけだ。害はない」
ココロ(そう言われたって……)
滴り落ちる血の量は増えている。
落ちた血をココロの足が踏み、血が跳ねる。
それを見るココロの顔は青ざめている。
ココロ「望葉先輩!」
ココロの呼びかけに立ち止まり振り返る柊。
柊は無表情だが、怒っているようにも見える。
柊「柊と呼べといったはずだ」
顔を近づけ命令する柊の迫力に押されるココロ。
ココロ「柊……せんぱい」
小さくつぶやくココロに満足そうに微笑む柊。
美しい柊の微笑に、頬を染めるココロ。
それを見てさらに満足した様子で、再び歩き始める。
手を引かれるがまま、ココロも歩く。
ココロ「私は……柊先輩のなんなんですか?」
柊「愛しい人だ」
振り返りもせず平然と言う柊に頬を染めるココロ。
ココロ「なんで、私なんか」
柊「オレにとっては、なんかじゃない」
ココロの言葉を遮る柊。
ココロ「どうして……」
ココロ(職員室で会って少し話しただけだよね? 一目惚れなんてされる見た目じゃないし)
困惑するココロ。
柊「理由を知る必要はない。ただ、受け入れろ。オマエはオレの愛しい人で将来の花嫁で――」
生徒会室と書かれた扉の前で立ち止まる柊。
扉をガラッと開ける。
柊「一年F組の柳木ココロだ。生徒会長の任命権において、今日からコイツをオレの秘書する。朝昼放課後、活動させるのでそのように」
ココロを抱き寄せ、自分の前に立たせる。
生徒会室内の視線が集まる。
島になった机に四人の男女が座っており、そのうち一番入り口に近い席にいるのが公景。
目を丸くして柊を見上げるココロ。
生徒会メンバー「承知しました」
公景以外の集まった視線はすぐに各々、手元の書類やノートパソコンに戻っていく。
公景「生徒会長の秘書って、そんな役あったかぁ?」
面白そうにする公景をひと睨みして、柊はココロの手を引いて、島になった机の奥にあるテーブルに向かう。
ココロ「ひ、秘書って……私、なにすれば」
テーブルに座りパソコンを開く柊の隣に立ち、冷や汗をかくココロ。
柊「オレが快く仕事が出来るようにサポートしろ」
ココロ「具体的には……」
柊「オレの仕事が終わるまで侍ってろ」
ココロ「はべっ……?」
頭にクエスチョンマークを浮かべるココロ。
柊「こういうことだ」
椅子に腰掛けたままココロの腕を引く柊。
低い位置から手を引かれてバランスを崩したココロを、柊はそのまま抱き寄せ膝に乗せてしまう。
いったいなにが起きたかわからないといった顔のココロを尻目に、何事もなかったかのように、ココロを膝に乗せたままパソコンに向かい生徒会の仕事をし始める柊。
ポカンとした顔のココロが柊の顔を見て、生徒会室のメンバーにも目をやる。
公景を除いた生徒会の役員たち全員が手を止めてぽかんとした顔で柊とココロを見ている。
しかし、柊がパソコンの画面から顔を上げると、なにも見てませんといった様子で顔を伏せて仕事を再開する。
公景「公私混同も甚だしいな!」
柊に睨まれても、公景だけは気にせず笑っている。
再び柊の顔を見るココロ。
膝に乗っていることで柊の顔が近くにあり、至近距離で目が合い赤くなりパニくるココロ。
ココロ(コレって絶対、秘書じゃない!)