先輩と後輩の関係。





次の週の朝礼で舜くんが退社することが正式に発表された。



現実だった。

受け止めたくなかったけど、受け止めるしかない話。





退社理由など詳しい話はされなかったけど、もうなんでもいい。




辞めてしまう事実はどんな理由でも変わらないから…


もう、私が飲み込むしかない。

きっと、生半可な考えで出した答えではないと思う。




大好きな職業を辞める舜くんの気持ちを考えたら涙が止まるわけもなかった。




…ここでは泣かないけど。

今日も帰ったら自分がどうなるかわからない。




ここ1週間は舜くんと別れたとき以上に自分をコントロール出来ずに色々な意味で苦しんでいる。

お店の営業が終わり、いつも通り帰ろうとした時…





「もういい加減にして」

と、半ギレの柚香が腕を組んで私の前に現れた。





『何を?』

「先輩のこと、前から知ってたんでしょ?」

『うん、知ってた』

「何で、そうやって1人で苦しむの?」

『本当の話だと思いたくないから』

「弱って行く凛を見てられないよ」






柚香は静かに私を抱きしめてくれた。

でも、不思議と涙は出て来なかった…






『ごめん、もう少ししたら話聞いてくれる?』

「夜中でもいいから辛かったら電話すんだよ?もういなくなっちゃいそうで怖いよ」


と、

私ではなく柚香の方が泣いていて…わからなかった。






こんな私を大事に思ってくれてありがとう。

私も柚香のことが大好きで大事な存在っていうことは伝わってて欲しいなと思う。






『大丈夫だよ、柚香は味方でいてくれてるから』






私は柚香と別れて、家に帰宅した。



自分と戦う時間が始まった。

1週間たった今も現実を受け止められずにいます。






舜くんが不意に買ってくれた指輪と、私のカメラロールに入ってる写真が切ないほどに目に入ってくる。



そして、泣くというパターン。

どれだけ泣いたら気が済むんだろ、自分。






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