優しい犯罪
「おじさん。私ここに居るよ?…家でも私は仲間はずれです。ここに居ても仲間はずれですか?何で?」
「落ち着け。息をしろ。ちゃんと吸って」
呼吸の仕方が分からない。
頭が混乱するほどに息も体に入ってこなくて、おじさんが背中を摩ってくれているのに、ありがとうも言えない。
「おじ、さん…。あ、あり…」
目の前のおじさんの服を掴むと、思いの外おじさんが遠くて、前のめりになったままソファから落ちるように倒れこんだ。
床に倒れるかと思えばどこも痛くなくて、意識が薄い中おじさんが私を受け止めてくれているのが分かった。
背中をゆっくり摩ってくれて、ずっと耳元で声が聞こえる。
脳にまでしっかり響く低い声。