優しい犯罪
「言いたくないけど、仕方ない…。優衣ちゃん、そこに居るからや。前田くんに会いたいみたいやけど、今は会わせてあげられへんから」
「優衣!?何で居るの?俺のとこ来たって、みっともない姿見せるだけなのに…」
「前田くんの話を聞いてからになるけど、ほぼ確定で刑務所に入ることになるやろうから。優衣ちゃんにそう話したら、会いたいって。あの窓の向こうに優衣ちゃん居るで。今のうちに言いたいこと、ぶちまけとき」
警察官の言葉に、下がっていた頭を勢いよくあげて、こっちを向いたおじさん。
目を大きく開けてびっくりしているけど、目がキョロキョロと動いて、私と目が合わない。
そうか。私からはおじさんが見えるけど、おじさんからは何も見えてないんだ。