優しい犯罪
「ここや。本当にこの向こうにお母さんたちがいるけど、大丈夫やね?気分が悪くなったら、すぐ言ってや」
暴言を浴びせられて、叩かれた相手には会いたくない気持ちもある。
でも親だから、少なからず母親にまだ期待をしている部分もある。
「はい。…大丈夫です」
私の言葉に頷いて扉を開けてくれた。
近くに立ってくれているから、安心して取調室に入れる。
確かに母親は椅子に座って取り調べを受けていて、両手首に輪っかがかかっていた。