優しい犯罪
「ちょっと待ってて」
箸を使ったことがない人は、きっとすぐには使いこなせない。
キッチンからフォークを取って戻ると、少女のお椀を持って食べ方のお手本を見せた。
フォークの爪にうどんを引っかけて、するっと落ちていかないよう慎重に口の手前まで運ぶ真似をすると、うどんに息を三回吹きかけて熱を逃す。
「これなら食べやすいだろ?」
「…ありがとうございます」
お椀を返してフォークを手渡すと、俺の見様見真似で一本のうどんをフォークに絡ませて、三回うどんに息を吹いた。
でもその息の吹きかけが足りなかったようで、うどんに口をつけると目を瞑って〝あつっ〟っとうどんから離れた。